深海で妖しく輝く「統一教会幹部」が書いた!どうして光る? ■DDH 中田敦彦
すべての生物学の土台となる学問こそが、分類学だ!
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なぜ、我々は「ものを分けたがる」のか? 人類の本能から生まれた分類学の始まりは紀元前。アリストテレスからリンネ、ダーウィン……と数々の生物学の巨人たちが築いてきた学問は、分子系統解析の登場によって大きな進歩を遂げている。生物を分け、名前を付けるだけではない。分類学は、生命進化や地球環境の変遷までを見通せる可能性を秘めている。生命溢れるこの世界の「見え方」が変わる1冊!
深海魚の「チョウチンアンコウ」は"発光する魚"として有名だ。では、深海に「光るサメ」がいることは、ご存じだろうか?
じつは、日本の海には、多くの種類の発光ザメが生息している。ただ、海中で光を放つようすが実際に観察されたケースはきわめて少なく、その生態は謎に包まれている。サメたちはいったい、どんなふうに光るのか。そして、彼らが光を放つ理由とは──。
体表をびっしり覆う発光器
まずは、深海にすむ「光るサメ」の実例を見ていただこう。
写真は、深海底で妖しい青い光を放つようすが近年観察された、ヒレタカフジクジラ(Etmopterus molleri)というサメだ。
カラスザメ属の一種で、日本やオーストラリア、ニュージーランドなどの水深200~900mに生息する。全長40~50cmと、サメにしてはちょっと小さい感じもするが、じつは、深海に暮らすサメのなかには、こうした小型種が意外に多い。
ヒレタカフジクジラの光る部分、すなわち「発光器」は全身に分布しているが、特に腹側が強く光る。
カラスザメ属のサメの発光器は、最大でも直径0.2mmほどしかない。微小な発光器が、皮膚の表面にびっしりと並んでいるのだ。
大西洋にすむ種類について、ベルギーの研究チームが調べたところ、1匹のサメがなんと44万個もの発光器をもっていたという。
一般に「光るサメ」とよばれるもののなかには、トラザメの仲間のように外部から光を浴びたときだけ「蛍光」を発するタイプもいる。一方、ヒレタカフジクジラやビロウドザメ(Zameus squamulosus)などは、発光基質をもっていて自ら光を放つ、いわば正真正銘の「発光ザメ」だ。
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このような「自ら光を放つ」発光ザメは、世界で63種が知られている。このうちの52種を、カラスザメ属が占めている。
だが、意外なことに、63種の発光ザメすべてについて、実際に光を出す姿が確認されているわけではない。どういうことか。
光を放つ姿をとらえた!
軟骨魚類学が専門で、沖縄美ら海水族館統括の佐藤圭一さんは言う。
「じつは、本当に光ることが観察されているサメは、まだ15種しかいないんです」
それ以外の48種のサメについては、「体に発光器をもっている」という特徴をもとに、「生きているときは海の中で光っているのだろう」と推測されているにすぎないのだという。つまり、どんな光を、どのようなタイミングで発するのか、多くの種類でまだまったくわかっていないのだ。
そうした状況のなかで、佐藤さんら沖縄美ら海水族館の研究チームは2018年、ヒレタカフジクジラが深海で実際に発光する姿を世界で初めて撮影することに成功した。
それ以前から、実験用の水槽内で発光するようすは撮影されていたが、自然界で光を放つ姿はとらえられたことがなかったのだ。
現場は、沖縄本島・残波(ざんぱ)岬の沖合約10kmの海域だ。水深500mの海底に、エサをつけた超高感度カメラを沈めて撮影をした。
記録された動画*には、やや興奮気味にエサに噛みつく複数のヒレタカフジクジラが映っており、腹部から青白い光を放つようすが確認された。
*参考(記録された動画):〈光る深海ザメ「ヒレタカフジクジラ」の秘密に迫る〉(海洋博公園・沖縄美ら海水族館)www.youtube.com/watch?v=HCCm2TkjXC8
なぜ光るのか?
サメの祖先が地球上に登場したのは、今から約4億年前と考えられている。そして、「発光するサメ」のグループである「カラスザメ類」や「ヨロイザメ類」が現れたのは、約9000万年前~約6500万年前と推定されている。
つまり、これらのサメは早ければ恐竜時代に、すでに出現していたとみられるのだ。
この推計は、化石の情報と分子進化の研究をもとに導き出されたもので、佐藤さんは「発光するサメたちは、かなり昔から地球上に存在していた可能性がある」と話す。
ヒレタカフジクジラは、なんのために光るのか? 考えられる理由の一つが「護身」だ。
深海とはいっても、深さ1000m程度までは、わずかながら太陽の光が届いている。腹側を光らせることで、自らのシルエットを打ち消すことができれば、海の底のほうから狙ってくる大型のサメなどの捕食者に見つかりにくくなるメリットがある。こうしたしくみはハダカイワシ目などの魚でもみられ、「カウンターイルミネーション」とよばれる。
フジクジラ類の腹部の発光器は、真下だけをうまく照らす構造になっている。これは、カウンターイルミネーションに好都合なしくみといえる。発光器についているレンズのおかげで、光を散乱させず、下側の方向へと絞り込んでいるのだ。
実際、沖縄本島沖の深海で撮影されたヒレタカフジクジラの動画でも、体をちょっとひねって向きが斜めになると、腹部の光が見えなくなることが確認された。
そして、カウンターイルミネーションのほかにも、「光る理由」が存在すると考えられている。
「青く光る」理由
それは、同種の個体どうしのコミュニケーション、そして、異性へのアピールだ。
ヒレタカフジクジラの近縁種であるフトシミフジクジラ(Etmopterus splendidus)も、よく似たパターンの発光をする。ただし、発光する部位はヒレタカフジクジラとは異なっている。
また、同じ種でも、オスとメスとで発光部位が異なることもわかっており、繁殖の際のシグナルとして光が利用されている可能性が指摘されている。
サメの視覚は、光の波長でいうと480nm前後の青色に、最も感じやすいピークがある。そして、光るサメたちが発する色もまた、青色だ。
佐藤さんはこう話す。
「サメのオスには、交尾の際にメスの胸ビレに噛みつく習性がある。フジクジラ類は胸ビレの縁が強く光るが、これは、オスがメスと交尾する際の目印になっているのかもしれません」
「光る液体」を放出するサメも
さらに、佐藤さんらの研究チームは2019年、ベルギーの大学との共同研究で、フジクジラ類が発光する理由について新説を論文に発表した(https://zoologicalletters.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40851-019-0126-2)。
ヒレタカフジクジラやフトシミフジクジラの背中の発光パターンを詳しく調べたところ、背ビレにある2本の鋭いトゲの周囲に発光器が密集し、トゲを照らし出すように光っていることがわかったのだ。このことから、「フジクジラ類の発光には、トゲを照らして"警告"を発することで、捕食者から身を守る役割もあるらしい」(佐藤さん)という。
フジクジラ類は腹部が最も強く光り、海底をぼんやりと照らすことができる。エサを探すときの"補助光"として、光が役立てられている可能性もある。
世界の海を見渡すと、光るサメのなかには、腹ビレ付近から「光る液体」を放出するものもいる。こうした習性は少なくとも2種のサメで知られており、光で敵を驚かせたり、敵の注意をそらしたりして、そのあいだに逃げるのに役立つと考えられている。いわば、光による「目眩まし戦略」だ。
謎に満ち、話題に事欠かない光るサメだが、2021年には新たなトピックが発表された。
世界最大の「光る脊椎動物」が日本にも!
ベルギーの大学とニュージーランド国立大気水圏研究所の研究チームによるもので、全長が人の背丈ほどにもなる大型のサメが、全身から光を放つのを確認した、というものだ。
水深200~1800mに生息するヨロイザメ(Dalatias licha)で、成長すると全長1.8mに達する。鎧(よろい)という名前のとおり、その体は硬い皮膚で覆われている。
大西洋や地中海を含む世界各地の海に広く分布するサメだが、茨城県以南の太平洋や長崎県沖の東シナ海など、日本の海にも生息している。
ここに掲載した写真は、捕獲した個体を船の上で撮影したもので、深海底での姿ではないが、ヨロイザメの体全体が青白く輝くようすを見事にとらえている。ヨロイザメは、発光するサメのなかで最大種であるだけでなく、「世界最大の光る脊椎動物」でもある。
江戸川乱歩(1894〜1965年)の『夜光人間』という小説には、全身から光を放つ"怪人"が登場するが、海の中には実際に、成人男性ほどの大きさの発光ザメが生息していたのである。
全長40~50cmの小型な種類のサメであれば、「大型の捕食者から自分の身を守るために発光する」というのは理解できる。しかし、生態系の頂点に近い大型のヨロイザメが、どうしてわざわざ光るのか?
新たな発見によって、「光るサメ」の謎はさらに深まったとも言える。
人工出産に成功
前出の佐藤さんは、生態調査に加えて、将来は水族館ならではの強みであるサメの飼育技術を活かした研究にも取り組みたいと意欲を見せる。現状では、野外で採集したヒレタカフジクジラの親魚は短期間しか飼育できないが、それを長期化するのが目標の一つだ。
「水槽で長期間にわたって飼育することで、エサをとる行動と発光の関係、よく光る季節や時間帯があるかどうかなどについて、詳しく調べてみたいと思っています」
ヒレタカフジクジラは胎生のサメで、母親の子宮内で胎仔(たいし)が育つ。
沖縄美ら海水族館と沖縄美ら島財団総合研究センターの研究チームは、サメの子宮内の環境に近い状態を再現できる「人工子宮装置」を独自に開発した。サメの胎仔を入れたタンクに液体を循環させ、酸素や栄養を与える一方、老廃物などはフィルターで除去できるという"すぐれもの"だ。
研究チームは、死んだメスのヒレタカフジクジラの体内にいた胎仔をこの装置に移して5ヵ月間育て、2021年に人工出産させる実験に成功している。こうした新たな手法も今後、飼育下での生態解明に役立つと期待されている。
沖縄美ら海水族館では、人工出産によって誕生した胎仔の飼育を現在も続けており、近い将来、展示することも考えているという。
私たち人間の目が届きにくい深海の世界──。そこに暮らす「光るサメ」たちの驚くべき生態がいま、少しずつ明らかにされつつある。
◇
光るサメをめぐる近年の研究結果は、広大な海にはまだまだ私たちの知らない世界が広がっていることをあらためて教えてくれます。その一方で、私たち人類は、世界の海の環境そのものを根底から変えてしまうほどの力をもつようになりました。
人為起源の温室効果ガスの増加にともなって、陸上の気温が上昇するだけでなく、「海の温暖化」も進行しつつあります。その結果として、私たちの食卓にも将来、大きな影響が及ぶことが避けられない見通しです。
日本列島をとりまく海とそこに暮らす生き物たちにいま具体的に何が起きていて、それは今後、どう変化していくのか──。山本智之さんの最新刊『温暖化で日本の海に何が起こるのか』で詳しく解説されています。ぜひご一読ください。