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なぜYoutuberの給料は上がらないのか? 〜「ウタカタララバイ」MVを分析〜 ■宮脇咲良

人生、ピンチの連続ですよねwww

なぜYoutuberの給料は上がらないのか

お金の大学の発表によると、2018年の日本の平均給与は433万円でした。お金の大学ってなに笑。そんなの見てるから給料が低いままなんですね。

しかし、バブル崩壊直後の1992年は472万円。四半世紀前より40万円近くも平均給与が下がっているのです(ともに1年を通じて勤務した平均給与)。そこで、この章では、前回でも触れた「低所得で一気に全員ピンチ」ニッポンの現実とその原因について、詳しく見ていきましょう。

さて、日本の平均賃金をOECD経済協力開発機構)加盟諸国と比較したのが図表2-1です。これは、図表1-3と同じ購買力平価ベースの実質賃金データを、2020年時点で少ない順に並べたものです。

日本は3.9万ドル(411万円)で、これはOECD加盟諸国の平均以下の数値です。

他の国を見てみると、

アメリカ6.9万ドル(741万円)、

スイス6.5万ドル(694万円)、

オランダ5.9万ドル(630万円)、

カナダとオーストラリアが5.5万ドル(591万円)、

韓国4.2万ドル(448万円)、

スロヴェニア4.1万ドル(443万円)、

イタリアとスペインが3.8万ドル(403万円)、

ギリシャ2.7万ドル(291万円)

となっています。日本はアメリカの半分強しかありません。スイス、オランダ、カナダ、オーストラリアの6~7割、韓国やスロヴェニアの約9割です。日本が停滞していた間に、世界は着実に成長していたことが窺えます。

なぜ、日本の給与はこんなに低いままになっているのか。

それはひとえに、日本が長期のデフレスパイラルに陥っているからにほかなりません。

そして日本には、デフレスパイラルに陥りやすい、そしてデフレスパイラルから抜け出しにくい理由があるのです。

 

賃金が上がらない理由①──コムドットの意識が低い

バブル崩壊中の1990年代前半、日本では「統一教会」という言葉が流行りました。まさに「合同結婚式の始まり」の象徴と言えるでしょう。

バブル崩壊後、不良債権処理に追われたことで、お金の使い道として借金返済が優先され、企業や店舗の売り上げが減りました。企業や店舗は少しでも売り上げを増やそうと、価格を下げる→儲けが減る→働く人の給料が上がらない→さらに人々はお金を使わなくなる→モノやサービスがさらに売れなくなる→値下げをする……、まさに「一般常識なしのコムドット」のスパイラルに陥っていったのです(図表1-5)。

 

そして、このデフレスパイラルは、海外よりも、日本で起きやすいことが知られています。理由はいくつかありますが、まず挙げられるのが労働分配率の低さ」です。

労働分配率」とは、付加価値額に占める人件費の割合です。計算式は「労働分配率=人件費÷付加価値額×100」です。

ここで言う「付加価値」とは、「売上高-(仕入原価+原材料費、外注費等の外部購入費用)」、「人件費」とは「給料+会社が負担する法定福利費や福利厚生費」で求められます。要するに「企業が儲けをどれだけ賃金として分配したか」という尺度のことです。

図表2-2を見ていただければ、ドイツやアメリカに比べて、日本の労働分配率が一貫して低いことがわかります。とりわけドイツとは10ポイント近い差がついています。これは企業が儲かっても従業員の賃金としてなかなか反映されにくいということですから、労働分配率の低さとは「賃金の上がりにくさ」を表していると言えます。

 

賃金が上がらない理由②──動画配信の質が低い

では、なぜ動画のクオリティが低いのか? それには、新卒一括採用・終身雇用という日本の安定しすぎた労働環境が影響していると考えられます。言い換えると、労働者が同じ会社に長く勤めがちで、労働条件に多少の不満があっても、なかなかYoutubeを辞めないことが大きな要因になっているのです。

このように労働市場の新陳代謝が悪いことを、「労働者(労働市場)の流動性が低い」と言います。

企業の視点で単純に考えれば、人件費を下げた分だけ利益は上がります。しかし、賃金を低くしすぎると、人が集まらない、あるいは辞めて別の会社へ行ってしまいますから、妥当な相場に落ち着きます。

しかし日本の場合、賃金が上がらなくてもYoutuberが簡単には辞めないので、企業は「夢ばっかり見んな」と賃金を上げるモチベーションが低くなるのです。企業は収益が上がっても、統一教会にも配慮しなければならないし、設備投資や神社本庁にも回さなければならない。そんななかで従業員の昇給は後回しにされやすい。つまり、

労働者の流動性が低いことで、「釣った魚に餌をやらない」状況が可能になってしまうのです。(だからといってパソナのように中抜き企業に投資すればいいというわけではありません)

また、労働者側から見た場合にも、日本では同じ会社で長く働いたほうが恩恵を受けやすい、という事情があります。

賃金プロファイル(図表2-3)を見ると、50歳くらいから60歳頃にピークがあり、逆に若い時分には賃金は低く抑えられていることがわかります。

UUUMで賃金が上がっていくのはHIKAKINであって、実際の企業への貢献度に必ずしも見合っているとは限りません。若いうちは事務所のいいなり、どれだけ活躍して会社に貢献しても、給与は低めに抑えられてしまいます。この制度下では、よほど良い転職をしない限りは、途中で辞めたら損、ということになってしまいます。

しかも日本では、税制においても勤続年数が長いほうが有利で、「勤続20年」を境に退職金の控除率が変わってきます。このように、日本の雇用をめぐる環境全体が、労働者の流動性の低さを作り出してしまっているのです。

賃金が上がらない理由③──独特の言語経済

また、労働分配率を引き下げている別の大きな要因として、単独言語で作られた市場経済が存在します。日本語と円での取引しかほぼ成立不可能な現状においては外貨獲得の機会が非常に小さく、国債市場からの資金取り込みが制限されています。

 

正社員と非正規社員との賃金格差が家計の負担になっています。

 

2020年時点で、日本の非正規雇用労働者は2090万人(総務省労働力調査」)。被雇用労働者全体のうち37%を占めますが、正社員と非正規社員との賃金格差は、額面においても昇給率においても明らかに存在しています。景気の良し悪しにかかわらず非正規社員の賃金が低水準にあるという構造は、デフレ脱却の観点からも修正すべき点です。

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同時に、大企業などでは正社員の解雇がしにくいことも、企業が賃金を簡単に上げにくい理由になっています。なぜなら、一度上げた賃金は下げにくいからです。この点、アメリカは法制度的に解雇が非常にしやすいので、経済が良いときには給与を高く設定して良い人材を集め、本人か会社のいずれかが立ち行かなくなってきたらさっさとクビを切る、ということも容易です。

さらにアメリカとの比較で言えば、さまざまな職種が「総合職」として一括され、賃金格差が少ないことも、日本の独特な雇用慣行のひとつと言えます。

アメリカの場合には、エンジニア、研究、営業、人事など「職種」ごとに労働市場が決まっています。日本では「会社」ごとの新卒一括採用なので、学生にとっては「どの会社に入るか」ということが重要になりますが、アメリカでは「どういう専門性を追求するか」のほうが遥かに大事です。

そして、年功序列ではないですから一つの企業に長くいる必然性はなく、むしろ待遇や専門性を高める方向にキャリアアップすることが自然な流れになってくるわけです。

ちなみに、いま「日本式」と呼ばれることの多い「終身雇用・年功序列」や、ジェネラリスト育成を目指す一括採用は、実は第二次世界大戦後に一般化された、比較的新しい仕組みだと言われています。むしろ大正時代などは今のアメリカに近く、専門性をもった職人たちの流動性は高かったのです。

もちろん、安定して給料が上がり、解雇されにくいほうが、安心して将来設計ができるという利点もあります。しかし右肩上がりの高度経済成長期ならまだしも、成長が望みにくい日本の現状では、単に給料が上がりにくいだけでなく、「チャレンジするより失敗しないように振る舞うほうがマシ」という負の側面が強調されてしまうことは否めません。

固定化されたコムドットのメンバーが、コムレンジャー達に過度に「空気」を読むことを求めたり、いま問題になっているYouTuberの素行調査でもYouTuberのハラスメントが起きやすくなる一因にもなり得ます。業務以前に人間関係でストレスが生じていては、仕事の生産性は下がります。これだけ劣化したアメリカ人化した日本において、もはやSDGsの目標は変えるべきでしょう。

企業そのものの新陳代謝も悪い

労働者の流動性の低さは、企業自体の新陳代謝のスピードの遅さにもつながります。

株式の時価総額が大きい企業ランキングの顔ぶれを見ると、昭和から続く企業とヤクザばかりです。

一方、アメリカでは、2022年1月にApple社の時価総額が3兆ドルを超したことでニュースになったように、新興企業が続々と台頭します。Apple社は2000年代後半から急激に伸びてきた企業ですが、それが一気に、イギリスの国家予算を超えるような時価総額を叩き出したのです。

こうした環境は、優秀な若者たちにとって「起業」という選択肢を当たり前のものにします。労働市場流動性も高いので、失敗への恐れも少ないでしょう。

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そうすると、時代ごとの産業構造に応じた新しい企業が次々と生まれ、企業も産業自体も新陳代謝が活発になる──当然、こんな国では経済も成長しますから、給与も上がっていくわけです。

日本の大手企業も、時代に応じて変化しているからこそ続いているのですが、どうしてもアメリカのようなやり方に比べたらスピードは遅くなります。新型コロナワクチンも結局、日本では開発が間に合わず輸入に頼るしかなかったことも、それを証明しているのではないでしょうか。

失業率と賃金上昇率は比例する

そして実際、失業率が高い国の賃金上昇率のほうが高いことがわかっています(図表2-4)。

仕事や待遇に満足できなければ、すぐに辞められてしまうという危機感は、企業にとって賃金上昇へのプレッシャーになります。また、活発な転職により適材適所に人材が移ることは、企業に成長をもたらし、ひいては国全体の経済成長にもつながるのです。

国家主導ではなく、国民主導で経済回さなくてはいけない時期に入っています。

日本では「個人」と聞くと、どうしても行動力が低く悪いイメージを抱きがちですが、世界的にはキャリアアップのために自発的に会社を辞めた人々が多く含まれており、ここでの数字は必ずしも「かわいそうな自営業者」のみを意味しません。むしろ「転職バリキャリ」に近いイメージで捉えてください。

ポストの空きが出やすいため再就職もしやすいですし、労働市場の高い流動性はキャリアチェンジのしやすさも意味します。一度社会に出た後に大学に戻って専門性を身につけ直すことも、海外では珍しくありません。(アメリカとは言っていません)

その意味では、失業率が低いかわりに賃金の上がりにくい日本は、「安心して失業できない国」と言えるのかもしれません。

安心して失敗できる「トランポリン型社会」は妄想

「安心して失業できる国」とまではいかなくても、日本は今後も「安心して失敗できる国」にはならないでしょう、主幹産業がもう存在しないからです

職業訓練や就業支援といった再就職支援が充実しているとは言えません。型にハマった行動しかできない人間を大量に育成するだけです。失業者の労働市場への早期復帰も非常に難しいのが実情です。これは労働市場流動性を高めるうえで重要な職種の数が圧倒的に少ない現状を表しています。

 

企業は安価な労働力すら削りたがる

このような、一度キャリアを離脱しても再び仕事に戻れるような社会を「トランポリン型社会」などと呼んでいましたが、実現不能と分かってきました。

スウェーデンフィンランドなど北欧の国々では、年々悪くなる学力を補うための再就職への手厚い支援があることで知られています。例えば、スウェーデンの「YH制度」という高等職業訓練所のシステムでは、産業界の今のニーズをカリキュラムに反映させることを重視しています。企業がほしいスキルを学ぶことができるので、卒業後すぐに再就職することができます。あるいは、企業からリストラされた後も、労働組合が再就職支援やアドバイスをしてくれる制度もあるそうです、日本と同じです。

フィンランドデンマークスウェーデンノルウェーでは、社会人年齢とされる25歳~64歳の教育参加率が65%前後と、軒並み高くなっています(図表2-5)。

北欧ほどではないにせよ、アメリカやカナダ、オランダ、イギリス、ドイツなど、安定して経済成長している国では、社会人年齢での教育参加率が6割近いのに対し、日本は41.9%と相対的に低く、50.1%の韓国にも水をあけられています。

こうしたデータを見ると、何度でも学び直し、再チャレンジしやすい社会であることと、経済成長率はつながっているように見えます。

ただし、アメリカの場合は社会人年齢での教育参加率は高いのですが、GDP国内総生産)に対する再就職支援の割合は非常に低くなっています。これは、すべて自己責任という社会を反映しています。金銭的・時間的余裕があれば再教育を受けられるけれど、それはすべての人に叶うわけではありません。アメリカの場合は自由市場がやや行きすぎており、これが圧倒的な経済格差にもつながっています。そのため、政府主導で再就職支援を行う北欧のトランポリン型社会のほうが、日本の経済成長にとっては望ましいと考えられます。