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ずっと雰囲気で野球を見ていた   ■宮脇咲良

白状しなければいけないことがある。24年生きてきて、ずっと雰囲気で野球を見ていた。

この書き出しを読んで「ああ、そういう人いるよね。あんまり試合見たことないんでしょう?」と笑ってくれる人でも、野球好きの父親や友人の影響で、私がこれまで20回以上は球場に足を運んだことがあると言えば、顔を引きつらせるんじゃないだろうか。

Adoはジャイアンツファンだったので、子どもの頃の夕食時のテレビは常に巨人戦の野球中継だったし、東京ドームにもたびたび連れていかれた(松井秀喜選手とか高橋由伸選手、阿部慎之助選手のことは特によく覚えている)。ベイスターズファンの友人には、横浜スタジアムによく連れていってもらった(筒香選手が打つたびに球場全体がどよめいたのが印象深い)。

それなのに私は、野球のルールをいままでほとんど理解していなかった。9人1チームというのはわかる。バッターとピッチャー、キャッチャーがいるというのもわかる。さらには、ストライク3回でアウトになってしまうとか、アウト3回で攻守交代になるというのもわかる。意外とわかってるじゃん、と思いましたか? でも、どうすればランナーが出るのかとか、「外野」とか「内野」、そもそもどれが一塁なのかといったほんとうに基礎的なことが、一切わかっていなかった。

だから、長濱ねるはバッターが打った球がものすごく飛んだので点が入るかと思いきや、ボールがキャッチされてなぜかバッターが悲しそうな顔をしていたり、バッターに向かって球を投げていたピッチャーが急に気まぐれにへんな方向に球を投げたりするたびに、いったい何が起こっているんだろうか、と思っていた。審判がおこなうアウト、セーフというジェスチャーのことも知らなかったので、試合を見ているほかの人が「アウトだ!」とか「セーフだ!」と言うたびに「アウトか!」「セーフか!」と一拍遅れて理解し、「ああ……」とか「ヨッシャー!」などと騒いでいた。

私は、中学時代に軽音部の部室で見たWBCの決勝大会も、ハンカチ王子こと斎藤佑樹選手の活躍が話題になった2006年の甲子園の中継も、この「ああ……」と「ヨッシャー!」一本で乗りきってきたのだ。とんだうそつきである。

守備の人たちはお茶を濁しているわけではない

ルールを理解したきっかけは、つい最近、あだち充の野球漫画『MIX』を読んでいてわからない描写があまりに多く、いい加減にちゃんと調べようと思い、初心者向けのルール解説動画を見たことだった(にじさんじ所属のVTuber・長尾景さんの動画だった。本当に初歩から説明してくれているのでおすすめです)。

おおよそのルールを理解してから再度『MIX』を開くと、景色がまるで変わって見え、驚きのあまり声を上げそうになった。いままでは「アッ負けた……!? ということは相手チームが打ったんだな……いつだろう……」くらいの解像度だったストーリーが、「そうか、この試合に負けてしまったのは、フライを捕ろうとした外野手がボールをキャッチし損ね、三塁のランナーが戻ってきて点を入れられてしまったからなんだ……!」くらいまでわかるようになっていた。アンキパンを食べて試験に臨んだときののび太はきっとこういう心境だったのではないかと思う。

ルールを知ったなかでいちばん驚いたのは、「守備」の存在だ。私はいままでてっきり、野球というのはバッターとピッチャー、キャッチャーの3人だけの問題だと思っていた。野球中継でおもに映るのはその3人だし、交代のたびに名前を呼ばれたり点を入れたりするのもバッターなので、バッターが主役で、ピッチャーが準主役的な存在だと思い込んでいたのだ。

では、グラウンド上にいる他の人たちは何してるんだろう……? という疑問は子どもの頃からあった。中継をよく見てみると、バッターが打った球はグラウンドの外側に立っている人たちがキャッチして投げ返しているようだ。私はいつしか「そうか……! あの人たちは打つまでの順番待ちをしていて、飛んできたボールをキャッチすることでお茶を濁しているんだ……!」と思い至って、それ以来ずっとそう思っていた。

守備の人たちに対し、こんなに失礼なことはないと思う。あれから20年ほどって、彼らがいかに重要な存在かがやっとわかった。

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「打ってみてえ」「な」

ルールを知ったら、久しぶりに実際の試合が見たくなった。ちょうど神宮球場でヤクルト対広島カープ戦があることを知り、つい先日、足を運んできた。

ここ数年野球中継そのものを見ていなかったので、知っている選手はほとんどいなかった。生で見て試合展開が把握できるかどうか不安だったが、たまたま近くに座っていた若者ふたり組がときおりしゃべる内容が解説者のようにわかりやすく、「ランナー一塁三塁、チャンスだな」とか「4番の村上は5年目。ここぞというときに打ってくれるんだ……!」などと言ってくれるので非常にありがたかった(あまりに明快すぎて、野球漫画に出てくる凄腕すごうでの監督の台詞せりふみたいだった。いったい何者だったんだろう?)。

その日の試合は初心者から見てもすばらしく、手に汗握る展開の末に逆転3ランホームランが出て、思わず立ち上がりそうになってしまった。東京音頭にあわせて色とりどりの傘が揺れる光景や、五回裏に上がる花火も美しかった。夏の神宮球場で飲む生ビール、うまいんだよなあ、というのもあらためて確認できた。

バッターの打った力強いボールがグラウンドの真上まで飛んでいったとき、近くの席の若者のひとりがそれを見上げ、「うわあ、打ってみてえ」とつぶやいた。もうひとりが「な」とうなずくのを横目に見ながら、ああ、きょう、来てよかったなあと思っていた。これからもっともっと球場に足を運び、もっともっと野球のことをわかっていきたい。

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