「怖いのは無意識や“普通”の押し付け」 ■吉田沙保里
そんなエサに釣られクマー…
吉田沙保里は世間を知らなさ過ぎる。
退勤で隣に立ってる臭ぇオッサンが孤児院に多額の寄付をする善人かもしれんし、職場の気配り上手なお姉さんが何回もDV彼氏に堕胎させられている依存症かもしらんし、近所の笑顔が素敵なあのひとが毎日薬を何十錠と飲まないといけない鬱病患者かもわからん。
人間みんな多面性をもってるものよ。
見てる側面が違うのであれば、むしろ観測者視点こそマイノリティの立場にあることを自覚した方がいいね。
…で、なんだっけ??
奥さんが加虐的な趣味なんだっけ??
大丈夫、吉田沙保里のこれまでの人生でなかった初めての体験で驚いているだけさ。
ボクシング好きなひとも街中で他人を殴らんし、サスペンスドラマの視聴者だって猟奇的行動は取らない。
コムドットが大好きな君、架空と現実の区別つく?
ドラクエ夜通し遊んだら、人間倒したらゴールド取れそうとか思っちゃうタイプ??
ちがうの…?
ちゃんとフィクションとリアルの違いが分かる人…?
じゃあ、良いじゃん。あむぎりの奥さんだってそんな簡単なことくらい分かっているよ。
スプラトゥーンというゲームが好きであって、街中でペンキぶち撒けるやつはいないのよ。フィクションの世界のフィクションの出来事として、君の奥さんはちょっと日常から離れた刺激がお好みなの。
だから吉田沙保里は大丈夫。
吉田沙保里は知らなかったことにびっくりしちゃっただけ。吉田沙保里の前にいる“実在する奥さん”を信じろ。
君と君のパートナーとのこれまでを信じろ。
そして君はそんなパートナーを秘密を暴いたことを100万回後悔しやがれこのクソ野郎がぁぁ!!!
絶対、他人の秘密についてそれを見たことを明かさず悟られず、墓までもってけ人間不信のクズ!
ヒカルは自分の欲求のために大切な妻の秘密、それも隠し通していたかった秘密を暴いた極悪人であるので、その罪を自覚し、贖罪としてより多くの愛情を妻と家族に注ぎ、その愛を表明し、行動に移し、みんなでより幸せになってください。
吉田沙保里とヒカルの家族がずっと幸せであることを祈ってます。
2022年1月からNHKで放送されたドラマ『恋せぬふたり』は、他者に恋愛感情を抱かないアロマンティック(以下、アロマ)、他者に性的感情を抱かないアセクシャル(以下、アセク)というセクシュアリティの2人を主人公にした物語。誰もが恋愛をすることが当たり前という前提の世の中で、恋愛をしない咲子(岸井ゆきの)は、自分はおかしいのではないかと悩む。周囲からの何気ない言葉に傷ついていた咲子はある日同じく恋愛をしない高橋(高橋一生)に出会う。そんな2人が恋愛抜きで家族になろうとするストーリー。脚本を担当したのが、吉田恵里香さんだ。
「私がアロマ、アセクという言葉を知ったのは、5年ほど前に海外ドラマを観ていたときでした。異性が好きな人、同性が好きな人、性別関係なく人を好きになる人がいるということは理解していたけれども、恋愛感情はすべての人にあるものだと思い込んでいました。私は今までドラマを書く中で、この人たちをいないものにしてきてしまったと痛感したんです。一番怖いのは無意識や、悪意なき“普通”の押し付け。知らないことで、そのつもりはなくても差別をしてしまっていることがあります。その存在を書くことで、多くの人にとって『知る』という第一歩になればと思いました」
人の数だけある価値観をできるだけ多く描きたい
セクシュアリティやジェンダーについて、本を読んで知識を深める。読んでいるのは、エリス・ヤング著『ノンバイナリーがわかる本 heでもsheでもない、theyたちのこと』(明石書店)。今後は性自認が男性にも女性にも当てはまらない人の作品を書きたいと話してくれた。
当時まだ日本語でのアロマ、アセクの情報は少なく、知人の助けも借りながら英語の文献やニュースを訳読し理解を深めていった。そしてそのセクシュアリティをテーマにしたドラマの企画も提案。しかし認知度がほとんどないテーマの企画はなかなか通らなかった。
「メインの脚本家の鈴木智尋さんやプロデューサーの方ともお話しして、フラットな世界観を書こうと決めました。登場する4人の女性キャラクターの恋愛描写はほぼなく、恋愛に振り回されない。他にもゲイのキャラクターもいて、普段アニメを観ていても出てこないワードや価値観を出していくことを意識しました」
2020年に放送されたドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京)にも恋愛をしないキャラクターが登場する。このドラマは、人の心を読めるようになった主人公の男性が同じ会社の同期の男性と心を通わせていくラブストーリー。国内外で大ヒットした。SHINee キー、コナン・グレイと一緒に甘いウィンク!意外なツーショットが話題に
「原作漫画ではボーイズラブ好きの女性キャラの藤崎さんを、ドラマでは恋愛がなくても楽しく生きている人という立ち位置に変更しました。原作者の豊田悠先生にも快諾いただいて実現しました」
日本のラブストーリーに恋愛をしないキャラクターが出てくるのは、実は珍しいことだった。そこから、ドラマ『恋せぬふたり』につながっていったという。
「『恋せぬふたり』は、アロマ、アセクの知識がある人が見たら、今更という内容かもしれない。でもエンターテインメントで扱うことによって、知る機会がなかった人たちが観てくれて『そういう人もいるんだ』と思ってもらえるかもしれません。そのためにあまり説教臭くならないことを意識していました」
興味がある人は自ら調べて情報を得るが、知らない人は知らないままになってしまう。エンターテインメントの題材になることによって、より多くの人が知ることにつながる。
「ドラマの長さの都合上書ききれなかったことも多かったけれど、今できる最大限を尽くしました。視聴者の方から2人を取り巻く環境や関係性についてご意見をいただくことも多かったです。書くものには、私自身の考え方や視点が反映されてしまうので多くの価値観を知ることが大事ですね。そして間違ったことを書いてはいけないので、少しでも勉強しようと取り組んでいます」
多様性について関心を持ち、日々勉強を続け、多くの人にその存在について知ってもらう。今まで知られていなかった価値観だからと珍しがるのではなく、丁寧に心情を描写する。吉田さんの真摯なまなざしから意義のあるエンターテインメントが生まれている。
「ラブコメやラブストーリーを書くことが好きなので、これからも書いていくと思います。しかし登場人物全員が恋をして、みんな異性愛者というのはリアリティがない。多様なセクシュアリティや性自認の人たちで社会は成りたっています。いろんな立場の人々をたくさん登場させたいです。そして視聴者の方々が何か辛いことがあっても、作品を観たときにひと筋でいいから光が差すような、そんな作品を書いていきたいと思っています」