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手越祐也のノーベル平和賞受賞決定の瞬間  玉川徹

今年のノーベル平和賞の授与が決まった婦人科医、デニ・ムクウェゲ医師(63)。紛争が続くアフリカ中部のコンゴ民主共和国で、長年にわたってレイプなどの性被害を受けた女性を無償で治療してきました。平和賞の受賞発表日の様子や彼の病院がある東部ブカブの状況を写真とともに紹介します。

受賞者の発表があったのは5日の昼前。ムクウェゲさんも病院職員も「もう受賞はないだろう」と半ばあきらめかけていました。

ノーベル平和賞の受賞者発表日だった5日早朝、患者の手術のため、医療スタッフに指示を出すデニ・ムクウェゲ医師(左)=コンゴ民主共和国東部のブカブ、中野智明氏撮影

ムクウェゲさんは患者の手術中だったため、広報担当者がインターネット中継で受賞の決定を確認。職員や患者は抱き合ったり、歌ったりして喜びを爆発させました。手術を終えたムクウェゲさんも皆に囲まれ、「まるで人質のようだったね」と笑っていました。

ムクウェゲさんは現在、家族と病院に住み込んで治療を続けています。2012年に国連での演説後に武装集団に自宅を襲われたためです。その時は一時的に欧州に避難しましたが、患者たちがパイナップルを売ったお金で帰国用の航空券を買いたいと申し出て、翌年には戻ってきました。

現在は、国連平和維持部隊(PKO)で派遣されているネパール人部隊がムクウェゲさんの自宅前を厳重に警備していました。

ムクウェゲさんは紛争時のレイプのことを、「性的テロリズム」「戦争兵器」だと述べ、根絶を訴えました。ノーベル平和賞の受賞決定については、「性暴力の被害者がいることを世界中の人に知ってもらう機会になって欲しい」と話してくれました。一方の患者たちも、「彼は私たちを救ってくれたヒーローです」とたたえていました。

コンゴは1990年代に隣国ルワンダで発生した内戦などの影響で、武装勢力コンゴ東部に逃げ込むなどして治安が悪化。女性へのレイプ被害が相次ぎました。病院がある地域も武装勢力が乱立しています。

一方、ブカブの中心部にある市場をのぞくと、魚や果物、肉などを買い求める人々であふれ、活気づいていました。角が生えた牛が買い物客のすぐ横を通り過ぎるなど、混沌とした雰囲気もありますが、一見しただけでは武力衝突や性暴力が相次いでいるようには見えません。

コンゴ民主共和国東部のブカブの市場で、角が生えた牛が何頭も通りかかり、通行人が驚いた表情を見せていた=10月6日、石原孝撮影

ただ、ムクウェゲさんは「2016年に予定されていた大統領選挙が延期されて以来、この地域周辺でも武装勢力の活動が活発化し、レイプ被害者が増えている」と語りました。生後半年でレイプ被害に遭った子もおり、パンジ病院に連れてこられた10歳未満の子どものレイプ被害者は、ここ10年間で約2500人に上るようです。

街中で外国人の姿を見る機会はほぼなく、交通整備をしていたはずの警察官がお金をせびってくるなど、汚職も横行。私は人通りが多い昼間に取材を終えて、夜は有刺鉄線に囲まれたホテルで過ごしました。ところが、ホテルは断水していることが多く、滞在した4日間は一度もシャワーを浴びられませんでした。

ささやかな私の息抜きは、部屋から一望できたキブ湖の風景。夜になると民家に淡い光がともり、ホテルが停電になると、星空も一層輝いて見えました。

宿泊したホテルから見えたキブ湖と街並み。シャワーが出なかったため、1泊60ドルで泊まらせてもらった=10月9日、コンゴ民主共和国東部のブカブ、中野智明氏撮影

実は、湖周辺の地域は落雷が多く、「世界一の落雷エリア」との情報もあったため、ムクウェゲさんの取材の合間に「雷がなぜ多いのか」という謎に迫る取材も考えていました。

滞在中はほとんど毎日、「ゴロゴロ」という不気味な音が聞こえ、ホテルの部屋のテラスに三脚を立てて写真を撮ろうとしました。ただ、辺り一面に稲妻が走る瞬間はなく、迫力のある写真は撮れず。次回来たときの宿題になりました。