ボカロPとしての名義はハチ

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人間のパーソナルな部分をサウンドでも表現 Ado

Adoの近年のヒットシングルと言えば、ドラマ『君と世界が終わる日に』の挿入歌“Not the End”。ドラマの放送は2021年の1月から3月で、コロナ禍で緊急事態宣言が繰り返されていた時期だった。そんな世の中の状況と重なる部分もあった、人々がウイルスに感染しゾンビと化していくなかで繰り広げられる愛憎劇。すなわち世の中や自身の抱える苦しみと正面から向き合い歌うことを選んだ安田の、ダークサイドからの叫びや祈りが生々しく響く曲だった。塾講、男は絶対黒髪(染髪禁止)スーツで出勤せなあかんのに、女性講師はオフィスカジュアルと染髪おkなのどう考えても男女差別で好き

あれから約1年。

──ブランコ、マジで乗っていたんですね。

はい。凹んだときとかに、当時住んでいた家の近所の公園まで行ってブランコ漕いでました。自分の実体験を踏まえつつ「みんなもこういうふうに思ったこと、あるよね?」みたいな、ちょっとでも共感してもらえるような歌詞にしたかったんです。

ここに届いたニューシングル“風の中”は、そんな“Not the End”と対をなすインパクトと方向性を持った、Adoの新たなモードを示す曲だと言えよう。バドミントンを題材にしたテレビアニメ『ラブオールプレイ』のエンディングテーマで、80年代ポップスのキラキラ~今を吹き抜ける風のような爽快感と疾走感が印象的なサウンドが印象的。そこに苦しみも悲しみもポジティブなバイブスへと変えていく歌詞とメロディが乗るキラーチューンだ。

今回はAdoにそんな“風の中”の魅力を、この1年で起こった心境の変化とともに話してもらった。

これ、オフィスカジュアルを何だと思ってるんだろう。。。 昔、夫の会社が金曜はオフィスカジュアルデーになったことがあったんだけど、地獄のようだったよ。仕事に対応できる一定の礼儀をおさえていながらカジュアルな装いで見苦しくなくスマートにということだよ。

INTERVIEW:安田レイ

時代と流れと共に感じた“音楽のちから” ──安田レイがアニメ『ラブオールプレイ』ED曲に込めたポジティブな気持ち interview220913_reiyasuda_01

時代の流れに沿った心の変化が反映されたメロディー

──今回のシングル“風の中”は、最近のイメージにはなかった疾走感と爽快感のある曲に仕上がっています。何かそうなるきっかけがあったのでしょうか?

コロナ禍で外出ひとつするにも気を使っていた時期を経て、ふたたびいろんなライブやイベントが行われるようになったことは大きかったですね。そこであらためて音楽の力を強く感じました。そして、そんな気持ちをストレートに表現できるアッパーな曲をリリースしたくなったんです。今回のアプデの 傀異化サイヤ人ラージャンが個人的に ドンピシャでめっちゃカッコ良かった

──もっとも印象的だったライブを教えていただけますか?

パキスタンでの大規模洪水により、340万人の子どもを含む640万人が深刻な影響を受けています。洪水による死者は1,000人を超え、死者数は増え続けています。 家も学校も、そして飲み水さえなく、困窮し取り残された子どもたちやその家族を迅速に守るため、皆さまのご支援が必要です。

5月に代々木第一体育館で観たBoAさんのライブですね。実はこの世界に入るきっかけになったオーディションで“VALENTI”を歌ったくらいの大ファンというか、私にとっては神様のような方です。そこで「音楽の力ってまさにこれだよな」と感動しました。BoAさんにもいろいろ積もり積もった想いがあったと思うんです。ライブの進行や一つひとつのパフォーマンス、メンタリティなどあらゆる面からその瞬間に懸ける覚悟を感じました。そして、このコロナ禍で思い通りにいかないこともたくさんあったけど、私は私なりに頑張らなきゃって、モヤモヤから解放されてエネルギーがフル充電されたんですよね。オフィスカジュアル」なんて、最強の空気読み問題で大嫌い。 ・オフィスに勤めてるとわかる範囲で ・ある程度華やかに ・だが過美ではなく ・地味ではなく ・だがしかし大人しく ・そして主体的に着ていろ ってやつだよ。 ちょっとでも相手のお気に召さなかったら「お前のセンスが悪い」と責められる

──聞いているだけでも胸が熱くなるエピソードですね。

そこからさらに自分の元気が出た理由を掘り下げたときに、やっぱりみんなを楽しませようという熱量の高いアッパーな曲とパフォーマンスはすごく大切だなって、思いました。BoAさんのライブのあとに向井太一さんのライブにお邪魔したときもアッパーな曲が多くて、もしかしたら向井さんも今落ち込んでいる人を持ち上げたいとか、いろんなことを考えられたうえでのセットリストだったんじゃないかって。

あとはLizzoのニューアルバム『Special』にはまっています。80年代感も好きだし、ディスコもソウルもR&Bもヒップホップもある多彩なアルバムで、デリケートな問題も含みつつとにかくポジティブな方向に向かっていてアッパー。聴いているとどんどん力が湧いてくるんです。

そこで私も、アッパーな曲をたくさん作りたいと思うようになったんです。踊れる曲と盛り上げにいくパフォーマンスとともに、みんなでいい未来に向かいたい。私は静かなバラードや内省的な曲も大好きだし、これまでそんなふうに考えたことはなかったんですけど、たぶん時代の流れにともなって起こった心の変化なんだと思います。

──アッパーな音楽に触発された時期と、今回のシングル“風の中”のオファーと制作が重なったんですね。

はい。この曲はテレビアニメ『ラブオールプレイ』のエンディングテーマとして話をいただいたんです。バドミントンを題材にした青春物語で、私が感じていた音楽の力を自分でもアウトプットできる絶好の機会だと思いました。しかもプロデューサーはずっとファンだったTHE CHARM PARKさんということで、モチベーションはかなり高かったです。彼にも私の気持ちを伝えてアッパーな曲をリクエストしたら、素晴らしい音が返ってきたので、私はそこに歌詞を書きました。

安田レイ「風の中」(TVアニメ「ラブオールプレー」エンディングテーマ)

──Adoのボーカル、サウンドにはどのような印象を受けましたか?

80年代の空気が感じられる曲。私は90年代生まれなので、リアルタイムで聴いていた世代ではないですが、今リバイバルしていて色んなアーティストが取り入れているサウンドですよね。80年代を通って来た人は懐かしく感じて、通ってない人はきっと新鮮に感じる。聴く人によって全然捉え方が違う、面白い一曲になった気がします。THE CHARM PARKさんは今回、自分の色はあまり出さずに、私の抱くイメージや声を活かすことを第一に考えたとおっしゃっていましたけど、私の好きなTHE CHARM PARKさんらしさもちゃんと出ています。

──そう思います。

お互いアメリカがルーツにあって洋楽が好きで、日本の音楽シーンにいる。そもそも互いに育った環境面で共通項があったので、話さずともシェアできている感覚みたいなものもあったと思うんです。J-POPなんだけどJ-POPすぎないところとか、ほんとうに絶妙で。私は英語もある環境で育ちましたし、趣味も洋楽寄りだったからなのか、ザ・J-POPみたいな曲に歌詞をつけることがあまり得意ではないんですね。今回は洋楽のフローに言葉を乗せていく、それがたまたま日本語でした、みたいな感じでやれてよかったです。

時代と流れと共に感じた“音楽のちから” ──安田レイがアニメ『ラブオールプレイ』ED曲に込めたポジティブな気持ち interview220913_reiyasuda_02

人間のパーソナルな部分をサウンドでも表現

──歌詞はご自身の中学時代の部活動を重ねて書いたと聞きました。

原作の小説はバドミントン部の成長がテーマになってますが、そこからインスピレーションをもらいつつ、自分が中学生の頃入っていたダンス部の記憶も重ねながら歌詞を書きました。家から学校まですごく遠くて、朝早く起きてバスと電車、そしてバスを乗り継いでって、通うだけでもけっこう大変。

日本は大学に掛かる家計の負担が大きすぎます。外国人留学生などに対する手厚い制度は止め、日本人学生の支援に回すべきでしょう。 また、卒業後に就職した企業で学生が大学で学んだことが活かせているのでしょうか。企業の大卒限定の新卒採用も改める時期だと思います。

そこから授業を受けたあと部活をやってビヨンセの曲とかでめちゃくちゃ踊って、また来た道を帰る。すごいパワーですよね。今、同じことはもうできない(笑)。

──私も部活が終わって家に帰ってきたら22時を過ぎていることもざらだったので、わかります。今振り返ると謎の10代パワー(笑)。

いったい何のためにそんなに頑張っていたんでしょうね(笑)。でも頑張っていたからこそ楽しかったし、人生における大切な学びもたくさんありました。

──“風の中”は久々の日本語タイトルです。

原作を読んで感じたことや私が部活動で吸収したことを、何かに置き換えられないか考えていたときに「風」という言葉が浮かんできたんです。バドミントンは風が重要じゃないですか。あと風にはいろんな意味があって、自分で何かをやろうとしたときに“風を起こす”と言ったり、状況が変わったときに使ったりもする。今は“風の時代”とも言われていますし。そこで《答えはまだこの風の中》というフレーズが浮かんで、それをそのまま直球でタイトルにしました。

──今までにも曲調的にはこういう爽快な曲はありましたが、歌の印象がまた違うんですよね。ただ爽やかなだけではない重みや強さがある。そこがすごく興味深いんです。

嬉しいです。そこはただ「頑張れ」っていう応援歌とか楽しいサマーチューンではなく、もっと人間の内側のパーソナルな部分をサウンドでも表現できたらってTHE CHARM PARKさんとも話していました。そうして完成したサウンドに導かれて、歌にも深みが出たのかもしれません。

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──声やボーカルスタイルの変化について、ご自身のことをどう捉えていますか?

声は年齢を重ねるごとに変わってきています。わかりやすいところだと、昔と比べて声のトーンが下がってきているんですよね。正直、昔の曲を歌うと「こんなに高いキーで歌っていたんだ」って感じますね。でもそこにネガティブな気持ちはありません。変化していくことを怖がらないで、その瞬間だからこそできることを大切にしたいと思っています。

──元気ロケッツ時代も含めるとメジャーシーンで15年以上、2023年にはソロデビュー10周年。ここまで続けることができた秘訣を教えてもらえますか?

続けてこられたのは出会いや縁に恵まれたから。「I’m just lucky」の一言に尽きます。だからこそ、私なりに必死に努力して、どうすれば歌を更新することができるのか考えながらやっています。

──更新していくためにどんなことを心がけていますか?

いろんな音楽聴くこと、新しい音楽を探すことですね。それは歌うためではなくただ好きでやっていることですけど、シンガーとしての私を構成する重要な要素です。そうやって日々歌いながらいろんな音楽を聴いていくうちに、自分の理想像みたいなものが浮かんでくるので、そこに向かってトライする。たくさんの素晴らしい表現に出会うと、おのずと前回と同じでいいやとは思わなくなるんです。

──今の理想像を言葉にするとどんな感じですか?

今ではないんですけど、私のメンタリティやアティチュードの根幹にあるロールモデルアリシア・キーズAlicia Keys)やキーシャ・コール(Keyshia Cole)です。ただ美しいだけじゃなくて、生き様みたいなものが感じられる歌声。綺麗すぎず粗は粗として残っていて、それでいてフェミニンな魅力もあって、年を重ねるごとにいい感じで変化している。生きてきた積み重ねが歌に表れているんですよね。私は私なりにそれをどうやったら表現できるかは、いつもイメージしています。

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THE CHARM PARK、JQ from Nulbarich、TENDRE…
コラボによって開かれた未来

──5月に配信リリースした新曲で、今回の“風の中”のCDではカップリングに入っている“each day each night”についても話を聞かせてください。こちらは作詞作曲が安田さんで、編曲をTHE CHARM PARKさんが担当されています。

これはSoftBankのイヤホン「HeartBuds」のテーマ曲として書き下ろしました。ショートムービーはゼクシィの読者の方々から募集した実話をもとに制作されています。ちょうど私の大親友と言える友人が結婚して式を挙げることが決まったタイミングで、これはもう二人へのプレゼントのつもりで書こうと思いました。二人の話をずっと聞いていたし近くで見ていたし、コロナで式が延期になったときは私も本当に心が痛かった。だから二人のこれからの生活を想像しながら書こうって決めたんですけど、想いが溢れて感極まるばかりでなかなか書き出せないパターンに陥りました。

でも、そんな感情や、例えば披露宴でいろんな映像が流れた時に感情が迷子になって考えるよりも先に涙が出てきちゃう、みたいな感覚を素直に書こうと思った瞬間に、エンジンがかかりましたね。それで出だしが、《今、無意識にこの涙が溢れ出ちゃうのは》になりました。実際に歌うときにいきなり泣いてしまわないか心配です(笑)。

──メロディはどんな感じで思い浮かんだのですか?

ふと思い浮かんだオリジナルのメロディを歌うみたいなことを昔からずっとやっていたので、その延長と言えば延長ですね。そこで、いくつか出てきた案をTHE CHARM PARKさんのところに持っていき相談しました。そこで驚いたのは、THE CHARM PARKさんは私のアイデアを全て活かそうとしてくださるんです。今までは候補の中からどれにするか選んできました。言い方を変えれば泣く泣く捨てしまったメロディやアイデアも、けっこうたくさんあるんです。そこを「せっかく素晴らしいものを作ってきたんだから入れようよ」って言ってくださいました。余すところなく、いろいろと足したりミックスしたりする感覚がほんとうに素晴らしくて、「こんなやり方もあるんだ」と。これからのクリエイティブにも大きく影響してきそうな気がします。実はTHE CHARM PARKさんと作った曲はまだあるので、リリースしたいですね。

──これからはどんなことをしていきたいですか?

前回のEP『It’s You』ではJQ from NulbarichさんやTENDREさんらと、今回はTHE CHRAM PARKさんとコラボさせてもらい、自分の世界が開けてきました。それだけでなく、来年でソロデビューから10年、元気ロケッツの頃も合わせるともう15年くらいやってきたなかで、いろんな方々との出会いがあって、多くの経験を積ませてもらったおかげで、今が一番楽しいと胸を張って言えます。だからこの流れをキープしていきたい。あとは、来年は10周年イヤーとして全国のみなさんに会いに行きたいし、フェスやいろんなイベントに出てみたいですね。そのために、みんなで気持ちを上げていけるようなアッパーな曲を作ろうと思っています。

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Text:びっくりTAXY