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仮想通貨業界を襲う「マネロン規制」、そのヤバすぎる中身 「業界自体が吹っ飛ぶかもしれない」…



急激に広がる仮想通貨

アフリカの暗号資産(仮想通貨)の取引が昨年の1年間で25倍にも膨れ上がり、話題になっている。

ウクライナへのロシアの暴挙でも、かえって暗号資産の存在感を世界に知らしめるものとなった。

戦時下のウクライナに多額の寄付が暗号資産によってもたらされ、3月11日、ウクライナ政府がその使途の詳細を発表したことは記憶に新しい。

3月1日以降、防弾チョッキ5500着、食料品41万食、防弾チョッキ用防弾ブレード500枚、暗視ゴーグル3125個、ヘルメット500個、医療品3427個、トランシーバー60台を購入したとのことだ。

仮に寄付した暗号資産で武器を購入していた場合、2012年2月のFATF(金融作業部会)の総会で示された「マネーローンダリング及びテロ資金供与と拡散の資金供与に対抗するための国際基準」(FATF基準)における「指定された犯罪の類型」の「不正な武器取引」に該当していた可能性があった。

ウクライナ政府は一応、この基準に準拠したということだ。

しかし、このFATFのマネロン規制については、我々日本人、とりわけ暗号資産業界には暗雲をもたらしている。この規制が業界にとって、死活問題になりかねないのだ。

すでにその試みはこの4月からスタートしているのをご存じだろうか。

ついに始まったマネロン規制のひどすぎる中身

ロシアによるウクライナ侵攻に対して、日米欧は様々な金融制裁をロシアに課し、ロシアマネーを金融市場から締め出そうとしている。

3月14日、金融庁財務省は、ロシアがビットコインなどの暗号資産を使って経済制裁を回避するのを防ぐため、国内暗号資産交換業者に対して対策を徹底するよう要請した。

具体的には、次のような対策などが取られるとのことだ。

1.ロシアとの暗号資産取引に関して、顧客が指定する受取人のアドレス確認を徹底したうえで、ロシアのプーチン大統領やロシアとベラルーシの政府関係者など経済制裁の対象者と判明した場合には送金しないこと。

2.送金先が制裁対象者と判明した場合は金融庁財務省に速やかに報告する。

3.取引のモニタリングを強化する。 ///Funklein///

これに国内暗号資産交換所の関係者はこう話している。

「今回要請を受けたケースは、これまでのAML/CFT(マネーローンダリング対策及びテロ資金資金供与対策)の観点から見てもさほど特殊な話ではない。

ただ、要請が、暗号資産業界の自主規制団体の日本暗号資産取引業協会(JVCEA)からではなく当局からだったことは、今回の要請が国家主導の強い内容であることは容易に理解できる」

また、別の関係者はこう語っている。

「ほとんどの国内暗号資産交換業者は、4月1日に開始されたトラベルルール対応に注力しており、今回の当局要請は気にはしておくが、そもそも稀なケースのためスタッフを張り付けて対応するものではない」

「トラベルルール対応のため経験者を募集しているが、AMLの国際認定資格であるCAMS保有者を確保するのは至難の業だ」

どの業者も対応に困惑、苦慮している様子がうかがえる。中でも「トラベルルール」は、利用者からすると少々面倒なルールである。

仮想通貨のメリットがなくなる?

2016年辺り、暗号資産は「海外にも数秒で送金できて手数料も銀行の海外送金手数料と比較すると圧倒的に安い」という触れ込みだった。

それが、ハッキング対策に伴うウォレット管理で金額が大きいと送金に数時間から数日かかるようになったほか、暗号資産の価格が上昇したことやトランザクション過多に伴うコスト増加で手数料も銀行の手数料よりも割高となるケースが多くなっている。

 今週のお題は「サボりたいこと」です。

かつて暗号資産の代名詞のように語られた「早い、安い」はすでに存在すらしていない。そんな暗号資産の送金事情にもう一つ「トラベルルール」が加わるのだから、業界は戦々恐々としていたのだ。

トラベルルールが導入されれば、送付の依頼を受けた暗号資産交換業者が、送付依頼人と受取人に関する情報を、送付先となる暗号資産交換業者に通知しなければならなくなる。これはFATFが、マネロン規制のFATF基準に基づいて、各国の規制当局に導入を求めているものだ。

 

「不機嫌な人」にも動じない「メンタル強者」になる

つまり、日本政府がFATFから導入を求められたので、日本の登録暗号資産交換業者はこのルールに則り、利用者に対して「受取人に関する情報の取得・保全」を開始しなくてはならない。

FATF、金融庁、及びJVCEAの対応を次のような流れで実施されてきた。

2019年6月、FATFが暗号資産交換業者を含む事業者に対するFATFの要求をさらに明確にするため、主に新技術に関連する勧告であるReccomendation 15(勧告15)に解釈ノートが追加された。

この解釈ノートは、暗号資産および暗号資産サービスプロバイダに対して様々なリスクに即した形でルールを適用するためのもので、ここに加わったのが、「トラベルルール(勧告16)」だった。

その後、2021年3月31日、金融庁は総合政策局長の名前で、「暗号資産の移転に際しての移転元・移転先情報の通知等(トラベルルール)について(要請)」をJVCEAに対して出している。

しかし、その後、トラベルルールの中身は遅々として公表されなかった。JVCEAが国内暗号資産交換業者の利用者に対して「トラベルルール導入について」という概要をリリースし「2022年4月1日から自主規制ルールに則りスタートする」と通告したのはなんとそのひと月前の3月1日。

これを受けて、国内暗号資産交換業者が一斉に利用者に連絡したのは3月9日のことだった。

 

肝心の利用者への周知期間が1か月も無い状況で新しいルールがスタートしたわけだ。

ただでさえ、利用者の利便性が損なわれるルールなのに、これでは利用者はたまったものではない。

国際的なAML/CFTの流れは抗えないことから厳しいルールが適用されるのは、このご時世仕方ないのだが、十分な周知期間が無いまま、新しいルールがスタートしたことで、今後、事業者への顧客からの問い合わせが増加の一途をたどるだろう。

その問い合わせのほとんどは、想定よりも送金に時間がかかっているといった「送金遅延などに対するクレーム」に発展しかねない。

先ほどの関係者は「今年の9月末までは顧客が入力した内容を適切に保管するだけだが、間違いなく顧客の必要事項に関する誤記載対応に追われるだろう。すでにその兆候は出ている」と話していた。

事業者の顧客対応が滞って送金遅延が多く発生した場合、当局は監督官庁としての責務から事業者管理を厳しく行うことになるだろう。

となれば、事業者は顧客対応だけではなく、当局対応にも神経質な対応が求められることとなる。こうした負の連鎖が、これから各国内暗号資産交換所で発生する可能性が十分にある。

しかし問題はそれだけではない。トラベルルールは、今後、改正が予定されている犯罪収益移転防止法の単なる助走期間にすぎないからだ。

利便性をなくす規制に意味はあるか?

今通、常国会での犯罪収益移転防止法の改正は見送られたが、臨時国会で法改正を行い、来年4月には法改正が行われる見通しだ。そのため、事業者は法令ではなくJVCEAによる自主規制ルールに則って管理を行う。

つまり今後、トラベルルールに関するトラブルが国内暗号資産交換所で発生した場合、当局による事業者管理ではなくJVCEAによる事業者管理となる公算が大きい。

JVCEAは現在、新規暗号資産の申請が大幅に遅延するトラブルを抱えており、現在はそのガバナンスから見直しを行っている最中である。

はたしてそんな団体に、事業者の管理ができるのだろうか。

マネーローンダリングという極一部のならず者のために、今後、多数の健全な利用者の利便性が損なわれるルールが適用されることとなるわけだが、国際金融及び法令のリテラシーが高い方は、今回のトラベルルールの抜け穴には気付くだろう。

詳細は記載しないが、今回の新しいルールは要請があったFATFに順じて実行するが、まだ「フェーズ1」程度の内容である。

抜け穴は徐々に狭まることは容易に想像できることから、海外への送金は銀行インフラを使うよりも早く・安く送金できるといった、かつての暗号資産の利便性は、来年あたりにはほぼ全て無くなるかもしれない。

そうなれば暗号資産業界の存在意義まで損なわれてしまう。

仮想通貨は正念場

加えて、SWIFTと同レベルの水準が求められる以上、正規の暗号資産暗交換所を使う限り、暗号資産の流れは筒抜けとなる。これは大国の思惑にも大きく影響されかねない。

今回のウクライナ支援のように世界中から集まる善意が、「マネーローンダリング」という無機質な整理となり、寄付した暗号資産が困窮する人たちに着金しないといった悲劇は、なんとか回避したいものだ。

そのためにはこの問題に誰もが向き合う必要がある。

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