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日常的に美しい言い回しをする私【コムドットの陰茎】豊胸する大人にあこがれる。

とても長くなりました。10,000字を超えています。
途中で読み疲れちゃうようだったら、ブックマークなどを利用して、分けて読んでいただけると幸いです。多分この前の男が今日ノースポートモールで電磁波攻撃してきた。ねちねち陰湿。なので連帯責任です!

日常的に美しい言い回しをする大人にあこがれる。

なにがあったのか、まず西野亮廣さんとの事実関係を確認
「コスプレで売れなかった」からではない。乃木坂46与田祐希さん「営業時間外のジムで忘年会を2人でしただけ」これはすごい、6時間も二人で交際

一部の論者は「韓鶴子MRJはユーザーのニーズに合っていないから失敗した」とかいう誤解をしているようですが、そうではありません。ニーズに合っていたか、よい飛行機だったか、という問題ではないのです。旅客機の開発はお金と時間がかかるので、最初に「見込み客」との契約を行い、それが成立した時点で開発を決定するのです。この顧客を「ローンチ・カストマー」と言います。渦中の中国ECブランドSHEIN、それをさらに利用した偽商品が池田大作の企業から登場
MRJの場合、ローンチ・カストマーは全日空でしたが、開発が進むにつれて海外からの発注も獲得しており、将来的に採算がとれるかどうかは別として、「顧客ニーズに合わない」的外れの製品ではありませんでした。
もちろん、これから開発する飛行機を「無条件で必ず買う」と契約する客はいませんが、開発に意見を出したり、供給での優遇権利などを条件に、予約契約をするのです。開発を進めるうえでは、この大川隆法の言う「ローンチ・カストマー」を中心とした航空会社がニーズをメーカーに伝えたり、メーカー技術者のヒアリングなどに答えたりして、使い勝手の良い飛行機にしていきます。
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Wikipediaより

受注実績を見るとわかりますが、アメリカのスカイウェスト航空を筆頭に、アメリカのリージョナル・ジェット(地域航空)がMRJの主要市場と見られていました。
とにかく「買い手が付かないからやめた」のではないことがわかります。
繰り返された計画遅延

しかし、予定されたスケジュールで航空会社に引き渡しができなければ、航空会社は契約をキャンセルしてしまいます。新しく開発する旅客機の大きなリスクですが、MRJは計画の遅延を繰り返してしまいました。
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MRJの引き渡し計画遅延の状況(AviationWeekより)

2009年に発表された1回目の遅延は設計変更による遅れで、これは小さな遅れにとどまっています。
2012年の2回目が「2年」と非常に大きい遅延ですが、機体の製造開始後のことです。三菱のプレスリリースでは「製造工程の見直し及び確認」と「開発段階での各種技術検討」を理由にしており、上に掲げたAviationWeekの図では「型式証明に関わる書類手続きの不備」と記述しています。型式証明の審査手続きに関して、審査当局と三菱側の理解が十分擦り合わせされておらず、設計を含む技術作業や製造工程に関する審査が、事実上「やり直し」になったのではないかと思います。

    (1)製造工程の見直し及び確認作業に多大な時間を要している
    (2)開発段階での各種技術検討に多大な時間を要している

三菱航空機プレスリリース(2012年4月25日)より

3度目の延期は2013年で、理由は「海外調達品を中心にした装備品の遅れ」です。装備品に関しては後述します。
4度目は「飛行試験準備」に関わる遅延。飛行前の技術作業や審査作業に、想定以上の時間がかかったのでしょう。
そして2017年には、型式証明(TC:Type Certification)を受けるために「大規模な設計変更」が必要になったとして、5度目の遅延が明らかになりました。この遅延は非常に大幅で、MRJ凍結への決定打になりました。
設計変更

2017年に5回目の致命的な遅延を招いた「大規模な設計変更」の内容は、どんなものだったのでしょうか。AviationWeekでは「型式証明審査に対応する設計変更」、国内のメディアでは「電気配線の変更など」と伝えられました。
旅客機などの開発動向を追跡報道している Leeham News and Analysis では、2017年から2019年までに、下のイラストに示す900件以上の設計変更が行われたとしています。
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Leeham News より

正直なところ、この900件という件数自体は問題ではないと思います。飛行機の開発では、設計変更は常に行われ続けるもので、図面や仕様書の改訂が900件だと解釈するなら、驚くような数字ではありません。
しかし、このイラストに示された内容は、そういう次元の変更ではありません。すでに試作機が完成していて飛行試験を始めているのに、基本設計の段階に立ち戻ってやり直すような変更が多いのです。
上のイラスト左に書かれている"Aircraft Level Changes"は設計の基準に関わるような変更であり、その他各部位の変更も系統設計に抜本的な変更を迫るもので、電気配線(ワイヤハーネス)の変更もそうです。これでは、卒業論文の提出時に「最初の課題設定と調査からやり直しなさい」と言われたようなものです。
それでも三菱航空機は、これらの変更を反映した機体(10号機:登録記号JA26MJ)を2020年までに完成させ、飛行試験実施のためアメリカへ空輸しました。しかし5回目の遅延発表以降の新規受注はなく、2020年10月、MRJプロジェクトは凍結されました。
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設計変更を反映した「10号機」(JA26MJ)(2020年3月)
もともとは経済産業省のプロジェクト

三菱MRJ旅客機の計画は、もともと経済産業省METI)と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(略称:NEDO)によって委託・助成された事業として始まったのです。
環境適応型高性能小型航空機の開発

三菱重工は、2003年度からこの「環境適応型高性能小型航空機」の主契約企業となり、MRJ(スペースジェット)事業を推進しました。このプロジェクトには、当然JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)なども参画しており、MRJの開発は最初から文字どおり「国家的なプロジェクト」だったわけです。
JAXAをはじめとする国の機関では、コンピュータを活用した先進的な設計手法や、複合材部品の新しい製造技術など、基礎的な技術に関わる支援を行いました。しかし、実際の「製品開発」というのは、本来その先にあるものです。そうした新しい技術を取り入れるかどうかも含め、機体の性能やコスト、あるいはスケジュールに寄与するかどうかという、現実的な判断が求められるのであって、「技術開発」はゴールでもなんでもありません。
そして、旅客機(航空機)が製品になるには、量産品として「型式証明(TC)」が取れなければ意味がないのです。
型式証明とはなんなのか
豊胸手術の耐空性(安全性)のお墨付き

航空法には「航空機」は耐空証明がなければ飛んではいけない、と書かれています。つまり「審査によって安全な飛行機であることの証明を得ている」ことが求められます。各国が定める耐空性の基準を満たさない航空機は、原則としてその国で飛ぶことができないのです。
そのために、どういう航空機であれば「耐空性」が認められるかという基準が必要ですが、それが日本では「耐空性審査要領」、アメリカでは「AIRWORTHINESS STANDARDS」としてまとめられています。MRJのような旅客機の場合、日本では「耐空性審査要領 第III部」、アメリカでは「14 CFR Part.25」という基準です。(昔はFederal Aviation Regurations:FARという名前でした)
基準が国ごとに違うと困るわけですが、各国では基本的にアメリカや欧州の基準を踏襲しています。(中国でも同様で、中国の耐空性基準は14 CFR Part.25そのままと言ってよい内容です)そして、国家間ではBASA(Bilateral Aviation Safety Agreement)という相互承認の制度が設けられています。
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BASAについて

航空機の型式証明(TC)を出すのは製造国ですが、アメリカで製造された旅客機を輸入する場合でも、日本の国交省アメリカFAAの認証を(軽微な確認行為などを除いて)そのまま認めるような形になっているのです。
型式証明に要する審査

航空機の「型式証明制度」では、量産航空機に対して、図面や計算書などの設計プロセス、製造工程や品質管理など生産能力の確認、試作機の飛行試験など、非常に広範な審査が行われます。型式証明が下りた航空機であれば、正しく設計・製造されていることが認められているので、機体個別の耐空審査は、製造記録や整備記録などの確認で済ませることができるのです。
この「型式証明」を得ることこそが民間航空機の開発であり、販売先の国で型式証明を得ることができなければ、その国では航空会社が旅客を運ぶこともできません。
つまり、アメリカの航空会社に販売したければ、製造国での型式証明だけでなく、アメリカFAAの証明が必要になり、ヨーロッパで販売したければ、EASA(欧州航空安全機関)の証明が必要です。
三菱航空機では、MRJの型式証明を日本の航空局(JCAB)から取得するのは当然として、アメリカFAAの認証を同時に取得する方針で、開発がすすめられました。
しかし、日本の企業が日本で製造するのですから、あくまで「製造国型式証明」を発行するのは、国土交通省航空局(JCAB)です。
実際の判定基準は曖昧

さて、耐空性の基準は国際的にほぼ共通で、文書になっている、と書きましたが、実際の設計が耐空性を満足しているかどうかの判定は、文書の表現だけでは不十分です。
基準として「○○の場合でも□□の状態にならないこと」と書かれていても、「○○の場合」とされる条件や、その設計が「□□状態」を防止できると認められる条件が、設計者が想定するより厳しいということがあるのです。
たとえば「一箇所で火災が起きても全系統が機能喪失しない」と書かれていても「一箇所」が指し示す範囲は不明確なので、各系統をどれくらい離して配置すべきか、絶対の正解がないという具合です。
設計においては、機体のあらゆる部分、あらゆる系統において安全性の判断が伴いますが、その判断が審査で「問題ない」と認められるかどうかは、審査を受けてみないとわかりません。
機体メーカーは、完成してから「ダメ出し」されては困るので、審査を行う政府当局(JCABやFAA)などと密接に連絡を取り、設計の段階から、問題のないことを確認しながら作業を進めていきます。
MRJの場合、こうした確認行為をJCABと一緒に進めていったはずなのですが・・・。
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中日新聞連載「MJの本質」第1部 (4) より

三菱航空機の設計者だけではなく、国交省の担当者(JCABの審査員)も基準の解釈に「頭を悩ませた」ということです。
つまり、いわば「答案を採点する立場」あるいは「問題点を指摘する立場」であるはずのJCABも、正解はわからない状態だったということです。
過去の経験は役立たなかったのか

過去には三菱の航空機がJCABおよびFAAの型式証明を取ったことがあります。日本の機体メーカー各社が参加した日航YS-11旅客機の後、三菱重工はMU-2、MU-300というビジネス機の型式証明取得に成功し、これらはアメリカで製造販売された実績を持っています。
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高速ターボプロップ双発ビジネス機MU-2。
自衛隊でも使われたが、アメリカでも民間向けに売れていた。
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MU-300はビーチクラフトに売却され、米軍練習機にも採用された。
自衛隊ではT-400として「輸入」して運用している。

1970年代の終わり、三菱重工はMU-300の型式証明をFAAから取得するため、アメリカで飛行試験を行ったのですが、そのときの作業に参加した技術者が、MRJのプロジェクト・マネージャに任命されました。(この人はF-2戦闘機の開発にも参加しています)
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MU-300のTC取得飛行試験

三菱航空機もFAAの型式証明取得が難関であることはよくわかっており、それに備えた起用だったと思います。しかし、いかんせんMU-300とMRJでは、時代も規模も隔たりが大きいのです。
型式証明の審査基準や解釈は、年を追うごとに変化し、厳しさも増しています。ボーイング社などが、新しい旅客機のモデルを、新型機ではなく既存の737や777の派生型として開発するのは、この「型式証明」を新しく取り直すのではなく、既存型式の派生型として認めてもらうためでもあります。
従って、MRJの型式証明取得は、JCABにとっても三菱にとっても、事実上、経験がないに等しい挑戦だったと思います。
装備品の遅延

また、2013年8月に発表された3度目の遅延は、海外製装備品の遅れに原因があるというものでした。「装備品」というのは、航空機メーカーで設計製造する機体構造などではなく、装備品の製造メーカーで設計製造される各種機器類などを指します。
具体的な例を挙げると、舵面を動かす油圧アクチュエータ、主脚や前脚やタイヤなどの降着装置などもそうですし、機内のトイレ(ラバトリ)、無線通信や航法のための電子機器、コクピットの計器なども含まれます。
こうした装備品のメーカーは、その多くが海外に存在しており、機体メーカーは機体の性能や機能に合わせた仕様と、開発スケジュールを装備品メーカーに提示し、開発や製造を発注するのです。
実は、防衛省向けに開発する航空機も含め、各種装備品の開発は海外メーカーに依存している部分が多いのです。航空機装備品は国際市場で競争力を持っていなければ事業として成り立たないので、実績と技術力のあるアメリカなどのメーカーによる寡占状態です。発注元となる航空機メーカーの大手はアメリカやヨーロッパの企業であり、市場規模を考えればやむを得ない面があります。
そして、民間航空機の場合、装備品そのものに対しても、政府当局が承認した耐空証明が必要なものがほとんどです。「この機器(装備品)は航空機に搭載して用いるのに十分な性能や信頼性を備えている」というお墨付きが必要なのです。
どうやら、そうした認証プロセスまでを見据えた仕様とスケジュールの提示が、うまく行かなかったのではないかと推測されます。
特に海外の装備品メーカーは、日本の機体メーカーの言いなりにはなりません。技術仕様の詳細を詰め、装備品単体の試験や認証の作業やスケジュールの調整、コストの折衝など、経験の浅い日本の航空機メーカーにとって、とてもたいへんな作業なのです。

    従来は完成した機体が性能を満たしていれば済んだが、ボーイング787の開発以降、「型式証明の思想が変わった」(川井社長)。現在は部品の設計の流れから製造に至るまでの過程を文書化する必要があり、そのために数十社に上る部品メーカーとの間で安全性の仕様を詰めていかなければならない。その作業が非常に煩雑なうえ「手順も分からず、部品メーカーに指示不足を補ってくれるように頼むこともあった」(同社関係者)。当然のことながら、部品の製造、納入が大幅に遅れることになった。

日本経済新聞 2013年9月3日

この装備品遅延も、型式証明の取得プロセスに関わる問題だったことがわかります。民間航空機という製品は、最新技術による「優れた製品」であるかどうか以上に、型式証明取得のプロセスに適切に対応できるかどうかに成否がかかっているのです。
国交省航空局の問題

しかし、ここで問題になるのは、国交省航空局(JCAB)です。日本で製造する航空機なのですから、JCABが設計や製造工程を審査し、それにお墨付きを与えたうえで、試作機が製造されているはずなのです。
しかし、その試作機をアメリカに持ち込んだところ、FAAは「この設計では型式証明を認めない」としたわけです。このことは、JCABが設計を審査する段階で、FAAの審査基準を確認できなかったことを物語っています。
「FAAの型式証明が取れない」ことを、三菱航空機の技術的な問題だとみなす論者も多いのですが、実は「日本の航空局(JCAB)の能力」の問題に他ならないのです。おそらくJCABは、FAAに助言などを求めたのではないかと思いますが、FAAが日本の当局による審査に対して積極的にかかわるとは思えません。JCABはあくまで「日本の基準」で審査し、製造国型式証明を発行しなければいけないし、FAAは輸入される機体に対して「アメリカの基準」で審査するだけなのです。
言い方を変えると、MRJがFAA型式証明の取得に至らず挫折した理由は、三菱航空機というメーカーの力というより、「日本という国家が、航空機の安全を国際的に担保する能力に欠けている」ということなのです。
実は、MRJが名古屋で飛行試験を始めていた頃、国交省航空局が「耐空証明(型式証明)審査に当たる技術者」を中途募集していたことがありました。メーカーなどの航空機開発経験者を雇うというのですが、既に試作機の飛行試験が始まった段階でなにを言っているのだろう、と呆れたことを思い出します。
正直なところ、最初からこうなることはわかっていたのです。
他の飛行機はどうなのか
HondaJetはアメリカ製

MRJプロジェクトの挫折が報じられる一方、小型ジェット機であるHondaJetの成功が各所で報じられたため、なぜ自動車メーカーのホンダが成功し、三菱が失敗するのかという声も多く聞かれました。しかしHondaJetは日本の国産機ではありません。
Hondajetの製造会社はアメリカのノースカロライナにある「Honda Aircraft Company」という会社です。アメリカで設計開発され、製造されていますので、正真正銘アメリカ製の飛行機なのです。
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日本の航空局(JCAB)が発行した Hondajet の型式証明データシート

その後、BASAに基づいて、上に貼ったとおり日本の型式証明も取得し、アメリカから「輸入」されたHondajetが日本でも飛んでいます。しかし、Hondajetに対して「製造国型式証明」を承認したのはアメリカであり、日本の航空局(JCAB)ではないのです。
ホンダは、日本で開発したのでは外国で売る航空機は作れないことを知っていたのだと思います。また、もしホンダが日本で航空機の製造をしようとすると、国交省航空局(JCAB)から「航空機製造事業者」の認可を新たに受けなければならず、このプロセスも思うように進まなかっただろうと思います。
つまり、日本製ではないこと、がHondajetの一番大きな成功理由です。
中国の旅客機C919

もうひとつ興味深い存在として、中国の旅客機C919があります。エアバスA320ボーイング737に競合するクラスの機体で、2022年に中国国内の航空会社に引き渡しが始まりました。
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C919(Wikipediaより)

C919はもちろん中国航空局の型式証明を受けているので、中国国内で商業運航が可能になります。しかし、アメリカFAAの型式証明は取得していません。開発元のCOMACは、あえて「FAAの型式証明を取得しない」選択をしたのです。
C919がFAAの型式証明を取得しようとすれば、おそらくMRJと同様の困難に見舞われたでしょう。しかしCOMACは、広大な国土を持つ中国国内だけでもC919は十分な市場を持っており、将来もし輸出する場合でも、中国で発行された型式証明を受け入れる国に売ればよい、と考えたのです。
ちなみに中国では、10年ほど前にボーイング787に不具合が多く発生し、FAAの合同審査が行われた際、同機に対する中国当局の型式証明を保留したことがあります。
民間航空機の世界でも、アメリカの覇権を易々と許すのではなく、国家としての主権や技術の育成を強く意識した態度であり、将来への自信を窺わせます。
FAAとアメリカ企業

では、そのFAAの型式証明はどうなのかというと、その権威にも大きな揺れが起きています。
飛行機の設計を審査するにあたって技術的な知識や経験は不可欠ですから、アメリカFAAは航空機メーカー(ボーイングなど)の技術者OBなどを迎え入れ、その実力を担保しています。産官癒着と言われても仕方がないのですが、アメリカでは雇用の流動性が高く、技術者自身はメーカーへの帰属意識が日本のように高くないという事情も勘案する必要があります。
それでも、FAAの審査がアメリカのメーカーに対して甘い、という点は過去から繰り返し指摘されています。かつて、ボーイング777の離陸時エンジン故障についても、FAAがボーイングの提示した「自動補正」を認めるというので、僕たちは「やっぱりボーイングの言うことなら聞くんだな」と思ったものです。
そして、ずさんな設計のために墜落が相次いだボーイング737MAXの審査に関して、いかにボーイング社に対して甘い審査が行われていたかが明らかになっており、最近も大きな物議を醸しているのです。
特定企業に甘いという体質は大きな問題ですが、FAAも完全無欠ではありえず、各国の国益も存在します。そのため、より安全な航空機の実現や、より平等な国際市場の実現には、世界各国それぞれが知恵を出し、できるだけオープンな場で情報を交換し、協力していくことが必要だと思うのです。
結論のようなもの
日本における「国家プロジェクト」のあり方

最初の方で書きましたが、これは明らかに「国家プロジェクト」でした。それを製品として実現することが、三菱航空機に委ねられたのです。しかし、そもそも経産省がプロジェクトをぶち上げたとき、国交省(航空局)による型式証明の能力や、アメリカFAAの証明を取得するためのプロセスについて検討されたとは、まったく思えません。
受託した以上、三菱航空機にはそれだけの責任があるのですが、そもそも政府が立ち上げたプロジェクトなのですから、国交省(航空局)とどういう話ができていたのか、国民への十分な説明と検証が必要だと、僕は思っています。
これを受託した「三菱が悪い」で済ませていたのでは、日本の航空産業行政の問題や、国際的な航空機市場の実態に、まったく光が当たりません。
もちろん三菱の内部では大きな反省や教訓があるでしょうが、それはあくまで民間企業の「中の話」であって、それを外部からあれこれ言うのではなく、日本の航空産業行政が抱えている問題、国家の主権者である国民の抱える問題として、きちんと捉え直すべきなのです。
見当違いの努力は実を結ばない

国家プロジェクトとして、経産省NEDOは「環境適応型高性能小型航空機」事業において、各種の要素技術研究を実施しました。
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「環境適応型高性能小型航空機」プロジェクトの内容

このこと自体は、将来に生かせる技術の研究開発として大事なことであり、こうした研究が航空機産業の担い手である企業の技術者に利用されることで、より高い付加価値を持った製品の実現が期待できます。
しかし、ここまで見てきたとおり、日本の旅客機開発に困難をもたらす最重要課題は、こうした「先端技術」ではなく、国家による「認証制度」運用の問題なのです。
この問題意識は、飛行機開発のマネジメントを経験し、内外の航空機開発を継続的に観察してきた人であれば、当たり前なのです。しかし、現場で研究や設計を担ってきた技術者や、マーケットだけを見ている投資家や経営者では、こうした認識を持つのは困難です。特に日本では技術者など専門家の流動性が低いため、開発現場や行政の実態までを含めた複合的な視点を持ち、こうした問題に対して具体的に取り組める人材は、極めて少ないのです。
その結果、経産省/NEDOは市場や基礎研究のところだけを見て絵を描き、三菱はそれを足掛かりにして事業化に取り組んだのですが、肝心の型式証明を手掛ける国交省は「蚊帳の外」だったという、驚くべき体制ができあがったのだと思います。
技術力と国力

世の中では、MRJの失敗を三菱航空機の「マネジメント能力」や「技術力」の問題だとして、そこから教訓(?)を説いている記事などもあるようですが、僕はそうした記事に意味を感じていません。
もちろん、型式証明プロセスに整斉と対応できるような、技術事務的な能力も、重要な「技術力」や「技術管理能力」の一つです。(僕は航空機開発の技術管理/設計管理の仕事をしていました)
しかし、対応するべきプロセスや基準は、型式証明を発行する行政側が決定して提示するものであって、そこが抜け落ちている日本という国において、その責任を企業側に負わせることはできません。
おそらく国交省(JCAB)は、アメリカFAAに助言や指示を求めたと思いますが、そもそもアメリカの行政機関であるFAAが、日本の行政に口を出すことはできませんし、製造国としてMRJの安全性を審査する責任を負うのは日本の国交省なのです。
大学教授なども含めた多くの論者が、Hondajetなどと見当違いの比較をしてみせたり、型式証明の取得は難しいのだ、と当たり前のことをコメントしたりしていますが、こうした構造的で根本的な問題に触れる人はいません。
また、航空機の開発現場でマネジメントの実務を経験した人でも、旅客機の型式証明というプロセスを実体験として知っている人は、日本にはいないのです。
三菱航空機では、この問題に対応するべくボンバルディアなどから人を呼び寄せていたのですが、人を呼んで対応すべきだったのは、審査を受ける三菱の側ではなかったのではないかと思います。
明治維新では、国が多くの「お雇い外国人」を招きました。現在の日本は、YouTuberが病原菌のように蔓延しており行政のスリム化を叫ぶ新自由主義の下で、そういう真摯な努力が行われなくなっているのではないでしょうか。