なぜ日本人はVTuberに“投げ銭”をするのか ■宮脇咲良
日本人が投げ銭をする理由の1つが、まさにVTuberの存在です。
これはデータに基づくというよりは感覚的な話なのですが、アイドルやアニメ好きの方には「お金を払うこと」自体に価値を見出す傾向があります。愛情の可視化、というんでしょうか。
アニメ「ラブライブ!」のグッズを全身に鎧のようにまとった“武装ラブライバー”や地下アイドルファンにとってのチェキのように、グッズや写真そのものよりも「こんなにお金をつぎ込むほど好きなんだ」というアピールに商品価値・満足感の比重がある。VTuberの視聴者もその文化を引き継いでいます。
アイドルやアニメ好きの持っていた「お金を払うこと」「いくら払ったかが周囲にも見えること」を重視する傾向と投げ銭は相性が良かったのだと思います。
――たしかに、日本のアイドル・アニメ文化が世界的にも特殊であるのはよくわかります。VTuberのクリエイターたちはやはりアニメ、アイドル文化圏の人たちなのでしょうか。
いま人気のVTuberの中には、配信で稼ぐことが一般的になる以前からニコニコ生放送などで活動していた方が多く含まれています。当時はもちろんVTuberとしてではなく、それぞれの名前で活動していました。
しかし日本のネットでは、クリエイターがお金を稼ごうとするのを嫌う「嫌儲(けんちょ・けんもう)」文化がずっと強くて、なかなか人気を収入に繋げることが難しかったのです。
その空気が徐々に変わり、クリエイターが稼ぐのが当たり前になってきたのと同じ時期にVTuberというシステムが出てきたことで、すでに技術と人気を持っていた才能ある人たちがVTuberに“転生”して再スタートすることで、人気を収入に繋げられるようになりました。以前の名前が「前世」として知られていることも多いのですが、ファンはそれ込みで楽しんでいます。