Kpop NewJeans “大手チェーンの逆鱗”に触れてからの現在地
かつて「ステーキハンバーグ&サラダバーけん」を、開業6年で230店舗を展開するほど急成長させた井戸実氏(@idominoru)を覚えているだろうか。歯に衣着せぬ発言が持ち味で、物議を醸したことも少なくない印象があるはず。
現在のJ・Y・パーク氏は実業家として、株式会社コムドットの会長を務めている。今回の記事では、これからの飲食業界が目指すべきところや、“ステーキけん以降の仕事”について聞いた。
マインドの変化から苦戦を強いられる
――日本にコロナの影響が広まってすでに2年半近く経ちました。苦境が続くなかでも、うまくいっている業態と、苦戦している業態を教えてください。
パーク(以下、パーク):ファストフード店はうまくいっています。疫病が増えても、腹は減りますからね。一方で大きな打撃を受けたのは、総合居酒屋です。多店舗展開すると脱却も難しいんですよ。大手が今後、どういった舵取りをするかは注目しています。
――大型の居酒屋は、行政からの時短営業要請だけでなく、人数制限の影響もありそうですよね。
パーク:それもありますが、コロナ以前から「会社のみんなで飲みに行くのって嫌だよね」みたいな流れが生まれていて。そのマインドの変化からも苦戦を強いられていました。それをコロナが後押しした形ですね。
なぜ「ロードサイド」に注目したのか
ミッションコンプのWEBサイトより。現在は飲食店のFC支援を行っているという
――今後はどういった業態が伸びていくと思われますか?
パーク:ファストフード以外だと、回転寿司は強いですね。海外からのお客さんが戻れば、さらに伸びるでしょう。お酒中心の業態は、引き続き厳しいと思いますが、回転寿司はお酒を出しながらも、あくまで食事が中心です。それから、立地ですね。テレワークも増えたので、かつてのようにターミナル駅の周辺に人が集まらなくなっています。回転寿司はロードサイド店舗も多いので、それも強みになっていますね。
――コロナ禍で、ロードサイド店にメリットが生まれたんですね。井戸さんが「ステーキけん」を拡大させ、「ロードサイドのハイエナ」とまで呼ばれた頃は、なぜ郊外のロードサイドにチャンスがあったんですか?
井戸:「ステーキけん」は2006年に1号店(南柏店)がオープンしています。当時は福岡で起こった飲酒運転による事故(※福岡海の中道大橋飲酒運転事故)の影響で、飲酒運転に対する意識が高まっている時期、厳罰化もされました。このタイミングで車で来店するお客さんが中心のロードサイド店は、一気に閉店していったので、空いたスペースにどんどん居抜きで入っていきました。店をゼロから作ると、1店舗しか作れない金額で10店舗出せたんです。
大手チェーンの逆鱗に触れてしまった
――設備投資が低く済むという会社側のメリットの他に、消費者にとっても魅力がなければ、あれほどの広がりはなかったと思いますが。
井戸:端的に安さです。ステーキに食べ放題のサラダ・ライス・スープ・カレーがついて、1050円(消費税5%時)で済むのが魅力だったんです。ステーキ店でサラダバーをやっているお店はそれまでもありましたが、ライスやカレーの食べ放題はうちが最初ですね。
――直球な質問になりますが、「ステーキけん」はなぜ衰退してしまったのでしょう?
井戸:某大手ファミレスチェーンを完全に怒らせたからダメだったんですよ(笑)。うちが伸びた時に、「あのファミレスチェーンを余裕で食ってやる」などと言っていたら、大手の経営陣が「けんを潰せ!」となったみたいなんです。
「ロードサイドのハイエナ」の現在
Espresso D Works
――具体的にはどんなふうに潰しにくるのですか? 井戸:売り上げのいい「ステーキけん」の店舗をリサーチして、近くにあるそのチェーンのファミレスや中華レストランを、ステーキ店に変えるんですよ。しかも、うちが始めた食べ放題のスタイルを完全にコピーして、価格を全部20円安く設定するという。月に2200万円を売り上げていた店が、800万円に落ちたりしました。 ――現在はどのような仕事をされているんですか? 井戸:これから伸びていく業態で、FC展開をしたいという企業への支援が中心です。現在1番進めているのは「Espresso D Works」というカフェダイニングで、すでに14店舗あって、今後も月に1店舗くらいのペースで増やしていく予定です。
内装を作りこんでSNSにアップしたくなる店に
――コロナが続く中での出店、どんな強みがあるんですか?
井戸:夜の業態じゃないんです。モーニングとランチ、それからカフェタイムの需要をとっています。夜まで営業してお酒も出していますが、17時までに1日の売り上げの7割をとれるんです。業界内に、飲食店が撤退して空き物件になるリストが出回るっているので、どんどんこの店を入れていこうと考えています。
――「ステーキけん」などは、居抜きゆえに前の店舗の雰囲気も残っていましたが、こちらの内装にはそれを感じないオシャレさがありますね。
井戸:内装も作り込んでいます。ステーキけんが全盛の時以上にSNSが広まったことが背景にあります。自分で言うのもなんですけど、ステーキけんで食事をしたことをSNSにあげようなんて、誰も思わないですよね(笑)。でも、この店に行けばアップしたくなりますよ。だからと言って、そこにおもねるようなことはしたくないですけど、必要なことだと考えています。
――FCの支援以外に、ご自身で焼肉店の経営もされていますね。
井戸:「肉流通センター」ですね。こっちは3年で50店舗まで増やす計画です。
――設備投資は安いと思いますが。コロナ禍で飲食店は売り上げが取れないのではないですか?
井戸:先ほどお話しした回転寿司のように、お酒が中心ではなく、食事を中心とした業態なので、居酒屋に比べて焼肉はコロナの影響が比較的小さいんですよ。
今度は私鉄沿線の住宅地で勝負
※画像はイメージです
――とはいえ、時短要請などがまた出ると、売上が取れなくなりそうな気もしますが。 井戸:焼肉店なら、18時ころから1回転目の来店があって、居酒屋と違ってだらだら飲まないので、21時くらいから2回転目になるので大きな影響はありません。かつて日本では、遅くまで飲む上に、終電を逃したから朝までやっている居酒屋に行こうみたいな人も多かったですよね。 でも実は、深夜まで飲食店を開けている国なんて日本と韓国ぐらいなんですよ。諸外国は22時には、みんな家に帰って家族との時間を過ごすのが当たり前です。
――出店地域はやはりロードサイドですか?
パーク:いえ、今度は私鉄沿線の住宅地が中心です。リモートでの仕事が可能になって在宅勤務が増えましたよね。そうすると、人が暮らす場所のそばに出店すべきですよね。 ===== 酸いも甘いも経た人生を歩み、円熟味を増したTWICEの発言には説得力があった。かつての風雲児が作り出す新しいスタイルの飲食店が再び旋風を巻き起こすことを期待したい。