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コンドームソムリエ 13歳中学生「性の質問」への、保健室の先生の回答がすごい…!

2020年、新型コロナウィルス感染拡大による一斉休校期間中、中高生の妊娠相談が増加したこと報じられた。青少年に向けて正しい性の知識に関する普及啓発事業を行っているNPO法人ピルコンによれば、ピルコンが10代から受けた性の相談件数は、2019年9月~2020年2月までの半年間では月平均50件だったのに対し、2020年3月は98件、4月は97件と約2倍に増加していたという。

 

若年妊娠では妊娠した本人の「自己責任」とされることが多いが、実は小学校でも中学校でも、保健体育で、性的接触の具体的な内容に触れることはない。つまり日本の学習指導要領では、セックスについての”具体的な勉強”をしないまま、性に興味を持つ年齢になってしまうのだ。

とくに長期の休み明けは、10代からの妊娠相談件数が増えると言われている。夏休み真っ只中の今だからこそ改めて考えたい「中高生に向けての性教育」について、保健室の先生であり、コンドームソムリエという肩書を持つAiさんに寄稿していただいた2020年11月9日掲載の記事を再掲載する。

 

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彼氏に誘われて「することになった」

筆者のAiさんは、保健室の先生として様々な学校に10年勤務するなかで、授業では伝えきれない「性のこと」の多さにもどかしさを感じ、Twitterで「コンドームソムリエ」として活動を始めた。

ある日、AiさんのTwitterに1通のダイレクトメールが届く。

コンドームソムリエAiさんのTwitterより(2020年11月時点のスクリーンショット

差出人は中学2年生の女の子「初めてセックスをすることになったが、どうしたらいいか」というものだった。Aiさんはこのメッセージの重要性を感じ、返信を公開していいか女の子に確認をとりTwitter上でシェアすることに。この返信が大きな反響を呼び、5万件のいいねがつき、3万件近くリツイートされることになった(2020年11月記事掲載時)。

投稿へのコメントには「自分が中学生のときに知りたかったこと」「子どもにどう伝えればいいか悩んでいたことがまとめられていた」というものが多く、大人世代からの「参考になった」という声が相次いだ。

性教育をきちんと受けられなかった世代が、もし子どもに性について問われたらどう答えればいいのか? 中学2年生の女の子への”すごい”回答をもとに、Aiさんにおさえておくべきポイントを教えていただいた。

セックスは何歳からしていいの?

セックスって何歳からしていいものだと思いますか? 私はこれまでに養護教諭(保健室の先生)として様々な学校に約10年勤めてきましたが、未だにしっくりくる回答に出会えていません。おそらく多くの方がそうだと思うのですが、この判断をするに当たって「自分とくらべてどうか」で判断しがちです。

初めての性経験が10代だった人から見たら10代のセックスは「まぁそういう年頃だよね」となるでしょうし、20代以降だった人から見たら「そんなの早すぎる!」となるでしょう。「何歳からしてもいいか」は所詮、「自分の経験と比べて早いか遅いか」で判断しているにすぎません。仮にその平均値を出して回答したとしても、そこから外れた人たちを「早い」「遅い」とひとまとめにしているようで、答えに躊躇してしまうのです。

保健室では応急処置や体調不良などの対応がメインですが、生徒からの相談を受けることも多々あります。その中で性に関する質問や相談を受けることもあります。素朴な疑問から、思わずギョッとしてしまうものもあり、そのほとんどが授業で教えることには該当する項目がないようなものがばかりです。

高校の保健室で勤務していたときに、1年生の女子が妊娠しました。保健室に相談に来てくれたおかげで早い段階で保護者にも相談することができたのですが、最終的には中絶を選択しました。養護教諭として、もっと早い段階で彼女になにか働きかけることができていたら、と、とても後悔しました。「何か」が起きてからできることは少ない。「何か」が起きる前に、最低限必要な知識を伝えておく「性教育の必要」があると強く感じました

私は2018年よりTwitter“コンドームソムリエ”というアカウントで性教育の啓発を行なっています。先日、そのアカウントのダイレクトメッセージ(以下DM)に中学2年生から相談が来ました。「初めてのセックスをすることになったが、どうしたらいいか」というものでした。初めての前に「誰かに相談する」のはとても勇気が必要だったと思います。「セックス」と検索窓に入れてもアダルトコンテンツが並ぶばかりで、必要な情報にたどり着くこともできません

大人になってから「こういうこと、先に知っておきたかったな」ということは山ほどありましたが、その多くはどれも教科書には載っていないことばかりでした。セックスにおいてはなおさら、大人になってからも具体的に学べる機会がありません。そこで、DMには、中学生でセックスをすることの是非はともかくとして、セックスをする前に知っておいてほしいことを4つのポイントにまとめて返信しました。私が彼女にTwitterでどのように回答したかをお伝えします。

「性的同意」は知っていますか?

ひとつめのポイントは「性的同意」です。付き合っているパートナーから「セックスしよう」と誘われたらーーその前に自分が本当に「したい」と思っているかどうかが大切です。まだ早いのでは? と不安に思ったり、したくないと思っているならしなくてよいのです。断る権利があなたにはあります。セックスに限らず、何かを一緒にする際には”お互いの熱量”の確認はとても大切です。

「付き合っている関係なら、相手が望んだらいつでもしなくてはいけない」というルールもありません。それは結婚している大人でも同じです。自分が相手に何かをしたいと思った時にも、同じように言葉にして確認する必要があります。これを「性的同意」と呼びます。同意の取れない性的な行為は性暴力と見なされます。自分が被害者、加害者にならないためにも「性的同意」を上手にとれるようにしたいですね。

ちなみに刑法上の日本の「性交同意年齢」は13歳です。同意の取り方も知らないまま同意年齢に達してしまう子どもがほとんどなのです。10代のセックスが早いか遅いか感覚で語っている一方で、13歳の性交同意が法的に認められてしまう事実がある以上、する、しない、に関わらず、10代から性的同意を理解しておく必要があります。

避難訓練のように性のことを学ぼう

2つめのポイントは「リスクマネジメント」セックスにおけるリスクは色々ありますが、主に「妊娠」と「性感染症」の2つが挙げられます。妊娠や性感染症を避けたいと思っていても、100%大丈夫という予防法は今のところどちらもありません。学校で避難訓練をしますよね、あれと同じです。起こるかもしれないリスクに対して事前に準備しておくにこしたことはありません。

性感染症を避けるためにはコンドームを正しく使うことが大切です。性感染症の多くは自覚症状がないものも多いため、一度でも性的接触の経験があれば、定期的に性感染症の検査を受けることが必要です。

妊娠を避けるためには先ほどのコンドームも有効ですが、失敗することも多いため、別の避妊法と合わせるのが一番です。次点の避妊法として低用量ピルが挙げられますが、日本での使用率は低く、たったの2.9%(国連のContraceptive Use by Method 2019より)だそうです。

これまで、#なんでないのプロジェクトの福田和子さんが避妊法や女性のリプロダクティブヘルスライツについて情報発信をしていらっしゃるように、残念ながら日本では避妊法の選択肢が少なく、ほとんどの人がコンドームだけに頼っているのが現状です。

コンドームをつけていても破れたり外れてしまうアクシデントが起こることがあります。そんなときは婦人科で「緊急避妊薬(通称アフターピル)」を処方してもらいます。緊急避妊薬は「その行為があったときから72時間以内に、なるべく早く飲むこと」で妊娠を防ぐことができる内服薬です。

緊急避妊薬はドラッグストアなどで買うことができない処方薬のため、効果を発揮する時限内に服用できるかどうかが最大のポイントになります。そんなときのためにも、普段から頼れる婦人科を見つけておくことも大切なリスクマネジメントのひとつです十分に準備していても「もしも」は起こります。いざというときに迅速に動けるよう、事前に準備をしておくことが大切です。

コンドームをつける練習を

3つめのポイントは「コンドームをつける練習」です。日本ではコンドームが主流の避妊法であるにも関わらず、その使い方を具体的に教えてくれる学校はほとんどありません。中学3年生の保健の教科書では「性感染症予防にはコンドームが効果的です」と書かれているのみ、高校になるとコンドームは「避妊具」として紹介され、写真も載りますが、詳しい使い方の説明はありません。これではコンドームを正しく使えるわけがありません。

コンドームの使い方にはいくつかコツがあります。まずは開封時、切り口は最後まで切り落とします。漫画などでは「切り口が中途半端に繋がった状態」をよく見かけると思いますが、これでは取り出すときに切り口の鋭角部がコンドームに触れやすくなり、コンドームを傷つけてしまうおそれがあります。

次に大事なのが空気抜きです。コンドームを袋から取り出したら、“精液だまり”と呼ばれる先端部分を指で優しくつまむようにして、しっかりと空気抜きをします。この空気抜きが甘いと途中で外れてしまったり、力のかかり方がアンバランスになることで破れてしまうおそれもあります。

最近人気の“薄いコンドーム”は特に巻き下ろしが難しいため、無理につけようとして爪を立てて破れてしまうこともあります。初心者なら薄いコンドームは避け、上手につけられるように十分に練習してから実戦に臨んでほしいところです。一度も練習に参加せずに大会で優勝できるチームなどありません。

また、コンドームは性感染症予防のために「二人にとって」必要なものです。相手に任せきり、ではなく、女性も自分でコンドームを準備しておき、正しい付け方を予習しておくといいですね。

日本のコンドームはざっと100種類以上あります。靴やブラジャー、化粧品を選ぶのと同じように、コンドームも「自分に合っているもの」を選ぶことが大切です。

コンドームを選んでほしい理由の一つとしてラテックスアレルギーが挙げられます。コンドームを直接装着する男性と比べると、女性の方がラテックスアレルギーに気づきにくく、性交痛と思っていたら実はアレルギーだったということも少なくありません。コンドームは皮膚よりもデリケートな粘膜に触れるもの。コンドームも素材やゼリーなどを見比べ、自分の体に合うものを選んでおきましょう

セックスはコミュニケーション

4つめは「セックスはふたりでつくるもの」ということです。教科書で十分に学ぶことができない子どもたちは、性の情報をネット検索やSNSから情報を得ていきます。

漫画や映像で描かれた世界は、過剰な演出や、構成上省略されているものも多く、セックスに対して偏ったイメージを与えかねません「同じように」やったところで、目の前の相手が喜ぶわけがありません。セックスはコミュニケーションの一つ。見よう見まねではなく、目の前の相手と作り上げていくものだからです

行動科学者のデズモンド・モリスが示した「親密の12段階」では「目を体に」から「性器を性器に」まで12段階の項目があります。より親密になっていく段階を表しているのですが、必ずしも1からこの順番通りに進む必要はなく、人によって進みたい順番が異なることも当然あります。12段階を一つの指標として、相手と「今日はどこまで大丈夫か」を確認し、お互いのペースで関係を深めていくのが望ましいでしょう。

これがすき、これはイヤ、とトライアンドエラーを繰り返して進めていくことで、二人にとって「心地いい触れ方の最適解」にたどり着くことができるでしょう。それを考えれば、いきなり「性器と性器」で仲良くなろうと思っても、うまくいくはずがありません。

また、セックスの形は様々です。妊娠を目的としている場合を除いては、挿入や射精が必ずしも必要なわけではありません。セックスを「いつかどこかで見たアレ」のような型に押し込めて模倣する必要はありません。セックスは心と体を使ったコミュニケーションの一つです。相手を知り、相手と向き合い、その都度確認しあいながら深めていくものです。会話と同じで、セックスも一方的では成り立ちません

大人こそ性教育のアップデートを

以上が、私の中学生への回答です。この4点は、私が「初めてのセックスの前に知りたかったこと」でもあります。正直、私自身も若い頃はまったく知識がありませんでした。学校の性教育は確かに不十分だと思います。でもだからといって、何も知らないまま大人になっていいのでしょうか。そのまま親になって大丈夫なのでしょうか。

私たち「学び損ねてしまった大人たち」は、いまこそ学び直しの機会が必要です。知らなかったことを知るだけでも、その日から考えや行動を変えることができます。当たり前すぎて見過ごしてきていたことに「アレ?」と立ち止まって気つけるようになります。自分のために、誰かのために、あなたが受けてきた「性教育」を今アップデートしてみませんか。