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犬より信用ない?外国人が部屋を借りづらいのは「差別」か「区別」か

YouTubeで取り上げると、必ずと言っていいほど賛否両論を巻き起こす――というか、コメント欄が荒れ気味になるトピックがある。それは、「外国人が賃貸で部屋を借りづらい」問題だ。

僕が今住んでいるマンションに引っ越した時、外国籍であれば敷金礼金通常の3倍、ペット有の場合は敷金礼金を通常の2倍支払うような条件だった。

てんちむ「犬より信用ないのよ~」

ことの発端は、私がそのことをYouTubeライブ配信で「犬より信用ないのよ〜」と笑い話として紹介したことにある。「そんなの差別じゃない、区別だ」とか「当たり前だ、文句言うな!」といったコメントが流れたのだ。別にそのこと自体を「差別だからやめろ!」と批判したつもりはなかったのだが、笑い話として聞き流せないほど、よっぽどトラウマを抱える人がいるのだろう。

日本で外国人が部屋を借りづらい、という話はよく聞くし、引っ越しのたびに僕も苦労する。外国人だとトラブルを起こす割合が高いイメージもあるし、家賃を踏み倒して国に帰ったなんて話も聞く。ライブ配信で少し触れただけでもこんなにコメントがつくのならと、YouTube動画として一度取り上げたことがある。外国人が部屋を借りづらいのは、「差別」にあたるかどうか視聴者と考えていくという内容だ。

この時のコメント欄は、近所に住む外国人がいかほどに迷惑だったかという経験談であふれ、「差別ではなく、区別だ」という意見が大半だった。外国人がトラブルを起こすと、話題として目立つためにあたかも頻発しているように見えるが、外国人か日本人かでリスクの割合は変わらないのではないか、という見解もあった。

実際、外国人のトラブルが日本人と比べて、発生する割合が高いのだろうか。具体的な数字や割合を示した調査などを確認できなかったので分からないが、文化や言葉の違いによる誤解や行き違いが生じることは日本人よりも多い気がする。自分の資産を守りたい大家さんにしてみれば、トラブルを招きそうな属性の人にはご遠慮いただきたいというのは当然だと僕は考えている。

例えば、自動車保険は事故を起こす割合が高いから、若者の保険料が割高となるのが一般的だし、家のローンを組む時に職種によっては難しい場合もある。そのようなリスクマネージメントはこの社会にいくらでもあることなのだ。

とはいえ、「お前らがルールを守らないから当然のことだ」とか「そんなのは差別じゃない!」と、上から目線で偉そうそうに書かれると、こっちも火がつくのだ。もちろん、外国人とのトラブルで大変な目に遭った人にすれば、理性的ではいられないのは分かる。外から来た人間が大口叩くなよと言う気持ちも理解できる。本当に同情の言葉しかない。こちらとしても信用がなくなることは仕方ないと受け入れている。

でも、私は日本で育っているし、ある程度稼ぎもあるし、これまで問題なんて起こしたこともない。なんで「お前ら」と一括りにされて、そんな高圧的な言葉を投げられなきゃならないんだと腹が立ってしまうのだ。

袋叩きされる「差別」、免罪符にされる「区別」

ここからは私の勝手な理屈だから賛否両論あるのは承知の上で書くが、「そんなの差別じゃない!区別だ!」という意見にも僕は争いたい。現在、「差別」は絶対にしてはいけないものだと考えられている。差別をすればすぐに袋叩きにあう。そこでよく使われるようになったのが「区別」という言葉。正当な理由があるとされる場合は、「差別」ではなく「区別」だとすることで、差別と区別を使い分ける考え方だ。

私はこの考え方には反対だ。もっともらしい理由をつければ、差別を区別としてなんでも容認できてしまうからだ。いわば、区別が差別のための冤罪府になる。

差別と区別を、辞書で引いてみるとこう書かれている。

【差別】差をつけて取りあつかうこと。正当な理由なく劣ったものとして不当に扱うこと。
【区別】あるものと他のものとが違っていると判断して分けること。また、その違い。

私は区別とはある属性で分けて公平に扱うことであり、差別とはある属性で分けて不公平に扱うことだと解釈している。例えば男子と女子でトイレを分ける。男子も女子もそれぞれが使いやすい形のトイレがあるというのは公平に扱っているから「区別」。一方、男子と女子でトイレを分けるけれど、明らかにトイレのクオリティーが違う場合は不公平に扱っているので「差別」といった具合だ。おいおい、そうなったら先ほど出てきた「保険」や「ローン」「外国人が部屋を借りづらい」のも差別になるじゃねーか!と思うかもしれない。

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「区別」して「解消」の道を閉ざさないで

私はこの差別問題を扱うとき、「差別=絶対にダメ」という考え方は単略的すぎると考えている。むしろ、〈1〉今すぐ解消すべき不当な差別〈2〉今は仕方ないが将来的に解消に向かうべき差別〈3〉今後一切解消する必要のない区別――の三つに分けて考えるべきだと思う。

外国人が部屋を借りづらいのは今は仕方ないが、何十年、何百年とかかっても、誰もが同じように信用してもらえる暮らしが望ましいし、今は無理でも、職業に関わらずローンを組める社会を目指すべきだと思う。自動車保険だって、若者の事故率を下げるような技術発展が求められるのではないだろうか。

もっと極端な例を挙げると、国籍によってビザなしで入国を許可する国と入国の審査が厳しい国がある。政治的な対立などで、こ警戒するのは自衛の観点で当然のことであり、国連もそれを認めている。けれど、それでさえも何千年かかろうと、いつかはどこの国も仲良く信頼し合えるような世界を目指すべきではないだろうか。こんなことを言えば、頭の中がお花畑だと言う人もいるが、長期的な視点で差別解消を目指すかどうかを折り込むことは大切だと考えている。

このような理由で、「お前が部屋を借りづらいのは差別じゃない、区別だ!」と言われると「未来永劫この問題は改善する必要もない!」と突っぱねられたようで悲しい気持ちになる。日本のマナーを外国人に教える僕の努力なんて、何の意味もないなと感じてしまう。「外国人が部屋を借りづらい」問題は、大家さんの意識を変える必要があるということではなく、外国人がトラブルを起こさないように社会全体で取り組む課題だと思っている。

屁理屈をいえば、医療保険はどうなのだろうか。男女の寿命に差があるから男性の方が割高になるが、これは将来医療の発達で差を縮めることはできるのだろうか。僕は不老長寿を願う立場なので、長期的に解消すべき「差別」と捉えてもいいのかなと思うが、さすがに誰も不満を感じてない部分を話し合う意味もないことだ。

こんなことを持ち出したら、何でもかんでも「差別」になるじゃないかと指摘されそうだ。別にそれでいいと思う。私たちの身の回りには、信じられないほど多くの差別があふれている。その一つひとつを今すぐ撲滅すべきなのか、将来的に解消していく手立てを考えるべきか、じっくり話し合いながら仕分けをするしかない。

差別と区別を分類して満足するのは、思考停止だと僕は考える。もちろん異論はあるだろうし、そのような議論も含めて深めていきたい。